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ライトノベルを中心とした小説や物語のレビューブログ

おすすめラノベ紹介/八城くんのおひとり様講座

八城くんのおひとり様講座

八城くんのおひとり様講座 (オーバーラップ文庫)


レーベル;オーバーラップ文庫
著者;どぜう丸
イラスト;日下コウ
発売日;2021/6/24
関連ワード;ラブコメ 学生 ぼっち リア充 青春

八城くんのおひとり様講座/カンタンなあらすじ

生粋のぼっちキャラである八城重明がいつものように教室で一人で過ごしていると、クラスメートでリア充グループに属する花見沢華音から突然相談を受ける。
それは、偶には一人になりたいが、一人だと何をしていいかわからないというリア充ならではの悩み――お一人様での過ごし方を教えてほしいというものだった。
八城は、華音にひとりカラオケをはじめとして一人ならではの過ごし方やマインド「ぼっち術」を身に着けさせていく。
華音に訪れた変化をきっかけに、彼女の友人のリア充や転校生たちも関わるようになっていき、八城のもとには人間関係の悩みや問題が次々と舞い込んでくる。

八城くんのおひとり様講座/登場人物紹介

八城重明

基本ボッチ属性の草食系男子。読書とサイクリングが趣味で一人で過ごすことを全く苦にしないメンタルをしている。

花見沢華音

コミュ力が高くクラスの中心である陽キャリア充グループに属する一人。幅広い交友を持つ反面、素の自分を晒せないことや自分の時間がもてないことを悩んでいる。

威堂智風

華音の親友。快活でボーイッシュなスポーツ系リア充。仲間想いで曲がったことは嫌いな正義感の強さを持つが、やや融通が利かない部分がある。

佐藤柚月

転校生。内向的な性格で、それがために以前の学校では交友関係がうまくいかなかった。内気な自分を変えたいと思っている。

羽鳥幸斗

リア充グループのリーダー的存在。思いやりがあり、剣道部所属の爽やかなスポーツマン。


八城くんのおひとり様講座/感想・レビュー

いわゆるぼっちとリア充の陰陽をテーマにした青春ラブコメものになります。ぼっちを扱った学園ラブコメは近年のライトノベル界隈では非常にポピュラーな領域と言え、多数の作品が登場してごった返しています。
まさにレッドオーシャン状態であり、ニーズが多い一方で競争が激しく、そのため作品ごとに独自に特色を出して差別化を図ろうとしています。
この作品においても当然そうした武器、ユニークな部分は備わっており、新しい部分を開拓せんとする意欲がしっかり見られました。
著者が描こうとしたのは、スクールカーストにありがちな確執をなくした新たな視点による世界です。
学生生活における一軍や二軍といった序列や階級を扱うと「妬み」や「僻み」という負の部分が露わになることがほとんどですが、この作品ではぼっちものには珍しくそうしたものが排されており、ほとんど扱われません。
ネガティブさが少ないので、全体としてさっぱりとした嫌みのない読みやすい内容になっています。どちらのサイドも否定せず、おおらかな受容的な態度をもって不和の先を進もうとする関係は非常に面白く、興味深い試みでした。
ただ、せっかく魅力と個性溢れる素敵な世界でしたので、もう少し作中内の表現や描写でわかりやすくもっとダイレクトに感じられても良かったのかなと思ってしまいました。個人的には世界の伝わりが全体的にいまいち弱かった点の不満は少々残りました。
そして、この作品には上記とは別にもう一つ著者が仕掛けたユニークな点があります。それは、ヒロインの見せ方です。こちらもラブコメとしては珍妙な手法で、大きく関心いたしました。
小説の中でヒロインの可愛らしさの表現方法は一つに限りません。必ずしも直接的でなければならないわけではありません。情報量を操作し、想像の余地を持たせることも大事です。
ネタばれになると魅力が半減してしまうため、あまり詳しく書けませんが、ラノベというキャラクター小説としてのギリギリラインを攻めながらも、個性と存在感を主張し、際立たせるやり方は個人的なツボにはまりました。
ヒロインのことが気になってページをめくる手が止まらないのが本当に心地よかったです。
こちらに関しては、ぜひ実際に作品を読んで確かめていただけたらと思います。ありがちなボッチ系学園ラブコメに見せながらも、とても独創性の詰まった素晴らしい作品でした。

ひとくちおすすめポイントまとめ

  • スクールカーストを新しい世界で描こうとする意欲的な作品!
  • 著者ならではユニークな手法でのヒロインの描き方!

 

おすすめラノベ紹介/聖剣使いの最強魔王

聖剣使いの最強魔王

聖剣使いの最強魔王 (富士見ファンタジア文庫)

レーベル;ファンタジア文庫
著者;春日部 タケル
イラスト;ハリオ
発売日;2021/6/18
関連ワード;ファンタジー 魔王 勇者 最強 バトル 異世界

聖剣使いの最強魔王/カンタンなあらすじ

魔族でありながら、人間との和睦を唱える異端の魔王マヒトは、その甘い思想を父親と弟のマガツに危険視されていた。
父の奸計に嵌められてマヒトは魔族相手には力を行使できない呪いをその身に受けると、無抵抗のまま暗殺の危機に晒される。
しかし、死の寸前でマヒトの身に召喚の魔法が起こり、魔族領域から姿が消える。その転移先となったのは人間界にあるシンフォリア王国。召喚の儀を行ったフラウディア姫からマヒトは勇者であると誤解を受けてしまう。
本来の勇者は別に存在していたのだが、マヒトは誰も引き抜けなかった聖剣に選ばれることになる。
クラウディアが持つ平和な世界への願いと自身の目的の一致から、マヒトは正体を隠しながら、現魔王討伐を請け負う。

聖剣使いの最強魔王/登場人物紹介

マヒト

歴代最強の魔王と呼ばれた父親を凌ぐ魔力を持つ。力のある魔族でありながら、それを無闇に振るうことを良しとしない平和主義で人間との和睦を目指す。魔族相手には力を失う呪いがかかっている。

フラウディア・フォウ・シンフォリア

神代の巫女を務めるシンフォリア王国の姫。献身的で自己犠牲的な気質を持つ。勇者育成学園に通うことになる。

ヨーコ・テンドー

異世界出身の女子高生勇者。底抜けに楽天的な性格で、ファンタジーのお約束に理解を示し、異世界にも適応する。勇者適性値が非常に高く、特に魔法に関する才能はずばぬけている。

シャイン・オニヅカ

勇者育成学園の受験生の一人。基本的に無気力マイペースだが、口が悪く特にマヒトに対して当たりが強い。倭刀を扱い、高い戦闘力を持つ。

マガツ

マヒトの弟。兄であるマヒトとは対照的に残忍、狡猾、冷酷無比と魔族らしい魔族。

聖剣使いの最強魔王/感想・レビュー

昨今の異世界トルファンジーもののテンプレやお約束要素をこれでもかと詰め込んだ作品になっています。
勇者、魔王、姫、召喚、聖剣、そして学園と入学試験などなど最初から終わりまでコテコテなところをお腹いっぱいで満足になるほど堪能できます。
決められたパターンや定型がなぞられていく都合上、導入部となる今回のストーリー的には、新しさや意外な展開といったものを求めるには、やや向いていません。
ただ画一に過ぎるというわけでなく、マンネリに抗うようノリや勢いといったコミカル成分強めの遊び心は含まれてますので、そこで著者の個性を感じられます。
テンポの良い掛け合い、やり取りも多く見られ、楽しい気分で読むことができます。そうした部分を支えるためのキャラクターと設定については非常にしっかりしている印象でした。メインキャラクターのほとんどが一癖二癖ありつつも、パワフルで色濃い魅力を持っています。尖った個性だからこそ、並んでも見分けが容易で、ぶつかり合った時の愉快な反応があります。マヒトも主人公らしい強い主張を持ちつつ、伸び伸び動かして、話を引っ張っている様子がよく描かれていました。善と悪の属性のコントラスト表現も典型的ながら、シンプルでわかりやすさがあります。
対する悪役側も非道さをしっかり前面に出すまさにファンタジーの悪役魔族らしいつくりで好感持てます。また、ボス候補がカリスマ性を備え、主人公らと深い因縁を持っている点にも期待感溢れました。
ヒロインキャラはヨーコが頭一つ抜けて、彼女以外はまだ今一つ良いヒロイン性が出ていないのでこれからといったかんじでしょうか。基本的には「黙っていれば」という感じの残念系がほとんどという印象ですが、どういったギャップを駆使して崩していくことになるのか気になります。
紋切型のストーリーやバトル部分を爆発力をもったキャラクターたちが思い切り壊したり、飛び出してからがこの作品の本番だと思います。次の展開が大変楽しみなシリーズです。

ひとくちおすすめポイントまとめ

 

おすすめラノベ紹介/ひだまりで彼女はたまに笑う。

ひだまりで彼女はたまに笑う。

ひだまりで彼女はたまに笑う。 (電撃文庫)


レーベル;電撃文庫
著者;高橋 徹
イラスト;椎名 くろ
発売日2021/6/08
関連ワード;学生 恋愛 猫

ひだまりで彼女はたまに笑う。/カンタンなあらすじ

高校の入学式の日、通学途中で佐久間伊織は、妙な態度で猫と相対しているミステリアスな少女・涼原楓と出逢う。
楓のことが気になった伊織は、彼女と同じクラスになると、その日からなんとなく目で追って観察するようになる。
楓は、表情の変化に乏しくほとんど笑顔を見せない。しかし、楓を目に触れる機会が多くなった伊織は偶然にも微笑んだ瞬間を目撃してしまう。
その表情は衝撃的で美しく一目で恋に落ちるには十分だった。すっかり心奪われた伊織は、楓とお近づきになりたいと考えるが、思いだけが空回りすることが多く、楓からは逆に距離を取られて避けられてしまう。
それでもめげずになんとしてでも心を開かせたい。そしてもう一度笑顔を見たい、それを見るために自分で笑わせたいと思った伊織は、幼馴染の小野寺湊や、楓の親友の鹿岡美鈴の協力を得ながら、難攻不落の楓の心を攻略していく。

ひだまりで彼女はたまに笑う。/登場人物紹介

佐久間伊織

お調子者でクラスでは弄られポジションのお笑い担当。楓の笑顔に恋をし、彼女を笑わせたいと思うようになる。男飯な料理をつくるのが得意。

涼原楓

学校でも注目されるほどの美貌を持つが、ほとんど無表情であまり笑うことがない。運動神経が良くスポーツが得意。猫が好きだが、同時に苦手意識も持っている。

鹿岡美鈴

楓の親友兼保護者。明るく活発で高いコミュニケーション能力を誇り、無口で他者と壁をつくりがちな楓も上手く周囲となじませることができる。

小野寺湊

小学校の頃から付き合いのある気の置けない友人。細目で緩い雰囲気だが、伊織に対しては毒を含ませた言動をすることが多い。

佐久間ひより

伊織の一つ下の妹。愛猫のコタローと兄のつくる豪快な男飯が大好き。

ひだまりで彼女はたまに笑う。/感想・レビュー

非常にシンプルでストレートなラブコメストーリーでした。キャラの配置も、主人公とヒロイン、そしてそれをサポートするそれぞれの友人が一人ずつと主人公の妹がいるという、どこにでもありふれたようなかなりスタンダードな構成と言えます。
しかし、主人公がまずヒロインに興味を持ち、主人公側から熱烈アプローチをしていく物語というのは、昨今のラノベの主流を考えれば、なかなか珍しいタイプではないでしょうか。ヒロインが既に惚れている、あるいは主人公に興味を持ってヒロイン側から寄ってくる受動的なものが飽和してる中で、しっかり差別化が出来ています。また、あらかじめ出来上がっている関係と違い、男性主人公が好感度0状態のヒロインと積極的に関係を持とうとするところから始まるのは、素直に読者の応援したい気持ちを強く刺激されます。
好きになった相手の笑顔が見たいという理由も目的も単純明快で受け入れやすく、そのために腐心する姿と動きは良き青春物語になっています。
主人公にややお調子者的で空回りするような部分も見られましたが、一途で真っすぐなところも昨今のラノベ主人公に比して好感を抱きやすかったです。
ヒロインは、オーソドックスにギャップを利用した可愛い魅力があります。最初そっけない態度だったのが、少しずつ心を開いていく展開も王道的で、その過程の中で読者もまたどんどん心が掴まれていきます。
楓は感情を表になかなか出さない無表情系キャラという設定ではありましたが、読んでいて表情も仕草の細かい描写も豊かな印象をしっかり受けました。一見矛盾を感じる部分かもしれませんが、「無」や「静」の属性設定を損なうことなく、メインヒロインとしての魅力のある様子を伝えるのは素晴らしかったです。最も大事な素敵な笑顔のイメージが頭の中で容易にできました。
ストーリー自体は簡素で、ラブコメとしての劇的なものや、意外性による驚きがないことは人によっては作品の一つの欠点と受け取るかもしれません。しかし、ヘビーな事情を抱えたドラマならば例外なく面白く、優れていると言えるわけでもありません。
小さいながらも、ほのかな温かさを感じさせてくれる物語にもまたそれならではの良さがあります。
ブコメは好きだけど、ありがちな受動的ラブコメや捻りを加えた変化球ラブコメにやや食傷気味かなという方には、おすすめできると思います。是非手に取って読んでみてほしい一冊です。

ひとくちおすすめポイントまとめ

  • 主人公が主体的に真っすぐ恋に邁進する青春ラブコメ
  • 無表情と笑顔のギャップを巧みに扱って表現されるヒロインの魅力!

 

おすすめラノベ紹介/未実装のラスボス達が仲間になりました。2

未実装のラスボス達が仲間になりました。2

未実装のラスボス達が仲間になりました。2

レーベル;ファミ通文庫
著者;ながワサビ64
イラスト;かわく
発売日2021年5月28日
関連ワード;ファンタジー、バトル、冒険、MMORPG

1巻の感想はこちら

yomukakunovelove.hatenablog.com

未実装のラスボス達が仲間になりました。2/カンタンなあらすじ

魔王を従えた修太郎の協力の下、大都市アリストラスに迫った侵攻の危機は防がれた。
しかし、訪れた平穏は一時的なもので、デスゲームそのものを終わらせなければ、プレイヤーの安全が本当の意味で確保されたことにはならない。修太郎は、閉ざされたゲーム空間からのプレイヤーの開放を目指すことにする。
ゲーム終了の唯一の手掛かりは「彼を破壊する」というmotherAIからのメッセージ。
彼の正体を探るべく、ひとまずゲーム攻略を進めようとする修太郎だったが、魔王らの力押しだけでは解き明かせない様々な仕掛けがダンジョンには施されていた。
他のプレイヤーとの情報交換を視野に入れた修太郎は、召喚士へのクラスチェンジを決意する。
召喚士の職業ならば、魔王を連れながらも自然に街を闊歩することも、プレイヤーと交流することも可能となる。
修太郎は、単独でアリストラスへ赴き、召喚士のいるパーティ依頼を探す。

未実装のラスボス達が仲間になりました。2/登場人物紹介

ルミア

アリストラスの紋章ギルドの窓口対応をする受付嬢。現実でも大企業の受付業務をこなしていた。

キャンディー

レベル35の紋章ギルドの頼れる戦闘指南役。体つきの逞しいオネエ。修太郎のことを気に入る。

紋章ギルド所属の重戦士。パーティのリーダー兼壁役(タンク)で、レベルも30超えの実力を持っているが、装備品はやや貧相。

ショウキチ

紋章ギルド所属の剣士。修太朗と同年代の活発な少年。リーダーである誠に憧れ、目標としている。

ケットル

紋章ギルド所属の魔導士。眼鏡をかけた少女。同じ年少組でお調子者のショウキチをよく冷やかしている。

バーバラ

紋章ギルド所属の聖職者。落ち着いた大人の女性。リーダーである誠を支えながら、パーティ全体を優しく見守る。

キョウコ

紋章ギルド所属の弓使い。パーティではショウキチやケットルの姉役の保護者。

リヴィル

紋章ギルド所属の召喚士。高慢な中年女性。タンクができるレアな召喚獣を従える。

未実装のラスボス達が仲間になりました。2/感想・レビュー

ストーリー

デスゲーム系MMORPGの2巻目になります。1巻目は群像劇として、様々な人物の視点から物語を動かしていましたが、2巻目である今回は、主人公である修太郎がほとんど中心となっています。
修太郎は、ゲーム内最強ともいえる戦力を持っているため、デスゲーム特有のハラハラする緊張感や危機感を楽しむという部分については、比較的薄味です。
その分、前の巻ではあまり描けなかった修太郎の魔王以外の他のキャラクターとの関りによる新たな人間模様が非常に多く描かれています。大人から同年代の子供たちまでいろいろなプレイヤーと接しながら、クエストを攻略していきます。
ひょんなことから過ぎた力を得てしまった修太郎ですが、その内面自体はまだ幼く、発展途上です。新たな出会いと共に心温まる交流を重ねて、少しずつ成長していく様子を見ることができました。
1巻目から期待していた方向とはやや違ってはいましたが、優しく温かな気持ちになるドラマがありました。
設定やそれについての説明は2巻目でも相変わらず多めです。一つ一つのコストはそう重くありませんが、やはりゲームやこの手の異世界ものに慣れている方のほうが負担はずっと少なく済みます。逆にワクワクできる好きな世界の塊として受け取れるなら、大きなプラスになるはずです。新鮮さはありませんが、ロマン的なものは強く感じられます。
今回、ラスボスの魔王やヒロインのミサキ、またワタルなどの最前線で戦うプレイヤーの出番が控えめだったため、次回は彼らの出番と共にまた心地よい緊張感とそれを打ち破る爽快感を体験できる素敵な巻になることを期待します。

キャラクター

2巻目からも新キャラクターが多数登場しました。正直、ひとりひとりのキャラクターをしっかりと認識し、見分けるのはやや負担があり、難しいところもあります。キャラクターが多い分、描写が薄いキャラもやはり出てくるため、一部を除けば、印象に残りづらかったです。
ストーリーの方で述べた通りほとんどが主人公の一人である修太郎にフォーカスした物語であったため、修太朗というキャラクターを色々な登場人物と関わらせながら、たくさん掘り下げを行ったのは良かったです。彼の幼さ、子供らしさはこの作品の一つの魅力になります。ショウキチのような同年代のキャラクターやバーバラや誠、ルミア、キャンディといった新しい大人組と交わることでさらに良い味が出ていると感じました。
また魔王らのシーン自体は多くはなかったものの新しい一面を見せてくれる魔王もいました。特に修太郎についていくために狼形態となったシルヴィアは良かったです。
もともとは凛々しく、クールな印象でしたが、可愛いところや、ちょっとポンコツで残念なところもあり、イメージが覆りました。魔王の中でも特にギャップが激しくて意外性が大変強かったです。
次回の書き下ろしはシルヴィアになるようなので、彼女の過去話やバックボーンがもっと見られるかもしれません。

ひとくちおすすめポイントまとめ

  • 修太郎と他パーティとの交流を描く温かなストーリー!
  • 魔王なのに可愛らしさとダメさを兼ねそろえたギャップを持つ魅力あるキャラクター!

 

おすすめラノベ紹介/クラスに銃は似合わない。

クラスに銃は似合わない。

クラスに銃は似合わない。【電子特典付き】 (MF文庫J)


レーベル;MF文庫J
著者;芝村 裕吏
イラスト;さとうぽて
発売日;2021年5月25日
関連ワード;学生 妹 バトル ファンタジー

クラスに銃は似合わない。/カンタンなあらすじ

折原昆は幼い頃、妹が欲しいと両親に告げた。
それから父が研究によって誕生させたのは、世界初のクラウド上に全身が構築された完全ネットベイビーである瑞穂だった。
瑞穂は、その維持費用に莫大なコストがかかっていた。
昆は、自身の愚かな言葉が招いた責任を感じて、高校生ながら妹の命を存続させるための大金を稼ぐべく民間軍事会社に勤めることになる。
最も給与面の良い傭兵での活動を希望していたが、その適性がないと判断され、護衛として仕事することになった昆に会社からあるテストが課される。
その内容は、一人の少女・谷城祥子のボディガード。
ただの女子中学生を警護対象とした不自然な仕事に疑問を抱きつつも、昆は祥子に接近すべく、身分を偽り中学校へと潜入する。

クラスに銃は似合わない。/登場人物紹介

田中(折原昆)

TACネーム「PP01」。妹を養うために民間軍事会社に雇われることになる。護衛任務の中で偽名として田中を名乗る。

折原瑞穂

昆の妹であり、研究によって生み出されたネットベイビー。誕生した際はその存在が世間に目をつけられ、多くの議論を呼んだ。本人に自覚がないがかなりのブラコン。

谷城祥子

昆の護衛対象。読者モデルをしており、ルックスが良いが、非常に負けず嫌いでマウントを取りがちな性格をしている。クラス内では孤立気味。

三っ葉葵千

名家である三っ葉葵の当主。見た目は天真爛漫な幼女だが、高いカリスマを備えている。

久木慈

千の従者であり、有能なる影武者。主人である千を誰よりも敬愛し、献身的に支える。

老師

昆の指導教官。過去に多くの人間を殺してきた凄腕の傭兵。未熟である昆の精神面を見抜き、それをケアしながら、一人前の護衛へと導く。

クラスに銃は似合わない。/感想・レビュー

ストーリー

学園を舞台にしたボディガードのストーリーになります。狙われるヒロインを主人公が守るというヒーローものに類する比較的人気なジャンルです。
ヒーローらしい熱い部分、必死さやがむしゃらさがしっかり備わっています。構造もベーシックでシンプルに楽しめます。
タイトルからは現代の銃を使ったアクション劇を想像しますが、人間同士の銃撃戦がメインというわけではありません。敵役の配置も、普通の人間も相手としていますが、それ以外にモンスターのような化け物が出てきます。現実の現代をベースにしつつ、ややファンタジーの要素を混ぜ込んだような世界になっています。
ファンタジー部分も、冒頭からしっかり出していますので途中から唐突にそうした展開が現れておいてけぼりを食らうようなことはなく、自然と飲み込めるつくりでした。
通常と異なる非現実が絡む自由さや新鮮さと現実的な部分の安定性や受け入れやすさの良い部分がそれぞれ出ており、上手くマッチしていました。
バトルやアクションシーンもテンポとスピード感が十分で緊張感を味わいながら読めました。
設定が独特で謎が多い部分もあるので今後どのように明かされていくのか楽しみなところでもあります。

キャラクター

護衛をテーマにしてますが、ヒロインらにはありがちなか弱い存在が見られず、むしろ騒がしくめんどさくさいものがほとんどになっています。
それは決してネガティブな意味でなく、めんどくささやウザさというものがヒロインの可愛らしさや魅力へと繋がっています。
印象と存在感も強く、またやかましいその個性のおかげで主人公とのやりとりも独特で愉快なシーンが多数繰り広げられました。
著者が作品の中で丁寧に描こうとした現実に抗うヒロインの姿勢も読者の共感を呼びやすく読んでいて気持ちよかったです。
それらヒロインを守る立場である主人公は、その性質上、平凡な無個性型ではなく、かといって最強というほど圧倒的なわけでもありません。ヒーローとしての強さを持ちつつ、緊張感による刺激も感じられ、絶妙なバランスの良さがありました。
不屈と勇気という欠かせない資質も持っており、それを支える良い背景があることも応援したくなるポイントでした。
すれているところや、斜に構えている部分もありますが、そうした彼の精神が物語の中でどんな成長を遂げていくのか見届けたくなる主人公だと思いました。

ひとくちおすすめポイントまとめ

  • ファンタジー織り交ざる学園潜入ボディガードストーリー!
  • 骨太で緊張感あふれるバトルとアクション!

おすすめラノベ紹介/初恋を応援してくれる幼なじみとのラブコメ

初恋を応援してくれる幼なじみとのラブコメ

初恋を応援してくれる幼なじみとのラブコメ (ファンタジア文庫)


レーベル;ファンタジア文庫
著者;神里 大和
イラスト;sage・ジョー
関連ワード;恋愛 学生 幼馴染 三角関係

初恋を応援してくれる幼なじみとのラブコメ/カンタンなあらすじ

織笠結斗には忘れられない初恋があった。
自宅療養ばかりで過ごしていた幼き日に仲が良かった一つ年上の少女・九条彩花。
彼女が遠くに引っ越してしまったためにしばらく全く会えずにいたが、一つの目標であった有名進学校である海栄学園高校のトップをとったことをきっかけに結斗は八年ぶりに連絡をとる。
「近々会いましょう」――その返答から間もなくして彩花は海栄へと転入してくる。
心待ちにしていた再開の時だったが、彩花は、夢を叶えて人気若手女優として活躍するほどの高嶺の花へとなっていた。
憧れの人の隣で並び立つ姿が想像できず、気後れする結斗。その姿を見た幼馴染の藤堂澪は、結斗の背中を押すべく恋のキューピットを買って出る。

初恋を応援してくれる幼なじみとのラブコメ/登場人物紹介

織笠結斗

勤勉で進学校の海栄学園高校の中でも優秀な成績を誇る秀才。若手女優である十条アヤの大ファン。

藤堂澪

結斗の従兄弟であり、幼馴染。海栄のスポーツ特待生であり、オリンピック候補と目されるレベルの水泳の実力を持つ。快活で非常に負けず嫌いな性格をしている。

九条彩花

結斗の初恋の相手。十条アヤの名で女優として活躍しているが、一時休止して海栄学園高校での学業に専念する。プロ意識が高くストイックで、かなりの倹約家でもある。

織笠京

結斗の姉で、彩花の親友。海栄学園高校の生徒会長にして学年主席という模範的生徒であるが、可愛い女の子に目がない。


初恋を応援してくれる幼なじみとのラブコメ/感想・レビュー

ストーリー

タイトルそのままヒロインが主人公の恋をサポートするというキューピット役になることが軸になるラブコメです。
このタイプは、おおまかに協力をするヒロインが主人公に対して好意を持っている、いないの二パターンに分かれますが、本作は前者の好意をしっかり持っている状態で、その主人公への好意を本人が完全に自覚できていないところから始まります。
主人公の恋を応援しつつも、少しづつ自分の恋心を意識していってその気持ちをなんとか押し殺そうと葛藤していく様子が一つの見どころとなります。
三角関係にはつきものの、ヒロインの嫉妬や対抗心、修羅場的な描写も軽めなものから重めなものまで多くみられました。「ドキリ」とさせるだけでなく、「ゾクリ」ともさせてくれるシチュエーションがあるのは良作の証です。質も量も三角関係ものとしては高い満足感がありました。
メインキャラクターである結斗、澪、彩花の三人の視点をそれぞれ細かく入れ替えながら、彼らの内面を丁寧に描きつつ物語を進めていくので、複雑な心理状態の変化もダイレクトに伝わり楽しめました。
恋を応援する側の澪が自分の気持ちを自覚し参戦するところからがこの物語は本番だと思いますので、これから三人の関係がどう転んでいくのか非常に期待できます。

キャラクター

三角関係ラブコメというストーリーの都合上、良くも悪くもめんどくささを抱えたキャラクターになっています。綺麗すぎず人間らしさをしっかり持つが故に良い拗らせ具合とそれによる面白いドラマが生まれる側面もあります。
ダブルヒロイン体制を確立するため、澪と彩花はそれぞれ異なる強みと弱みの個性と魅力をアピールしてくれます。
澪は、がさつで女性らしさが欠けているように見えますが、ふとした瞬間にしっかりと少女らしい可愛さや異性を感じさせるギャップを有しています。彩花のほうは、逆に女性らしさが溢れ優し気なイメージのキャラですが、自己への厳しさを持っていたり、勉強面が苦手などの意外な一面を持っています。
どちらのヒロインも応援しやすいエピソードがしっかりあり、良いバランスで描かれていました。
主人公は、努力家設定なのもそうですが、ストーリーの中で自分の好きな人と並び立つために高い目標を持つ点に好印象を受けました。難しい夢の道程に彼がどう立ち向かっていくのかも恋愛模様と同じくらい気になるところです。 

ひとくちおすすめポイントまとめ

おすすめラノベ紹介/楽園ノイズ

楽園ノイズ

楽園ノイズ (電撃文庫)

レーベル;電撃文庫
著者; 杉井 光
イラスト;春夏冬 ゆう
発売日2020/5/9
関連ワード;学園 音楽 青春 女装

楽園ノイズ/カンタンなあらすじ

ネットミュージシャンとして活動している村瀬真琴はある日、姉からの勧めもあり、女装して演奏した動画を投稿する。
思いがけず大きな反響を起こすが、それが高校の音楽教師・華園美沙緒に見つかって、正体が知られてしまう。
真琴は、自身の秘密を黙ってもらうことの交換条件として、美沙緒から雑用を次々と押し付けられる。
伴奏に編曲、楽器倉庫の整理や、知り合いへの届け物など様々な仕事をきっかけにして真琴は音楽少女たちと出会っていく。
少女たちは類まれなる音の才能を有していたが、その眩い輝きは表舞台より儚く消えようとしていた。
彼女らの奏でる音に魅入られた真琴は、自らの曲とセッションを重ねて、あるべき舞台へと導いていく。

楽園ノイズ/登場人物紹介

村瀬真琴

「Musa男」の名で活動するネットミュージシャン。中性的な容姿をしており、女装が様になってしまう。

冴島凛子

かつてピアノのコンクールを荒らした元神童。辛辣な物言いが多く、特に真琴に対しては遠慮がない。

百合坂詩月

華道家元のお嬢様。ジャズ好きで道楽人の祖父によってドラムスを仕込まれる。

宮藤朱音

不登校児で、スタジオに入り浸ってはバンドの助っ人をしてきた。様々な楽器を使いこなし、さらに周囲のレベルに適応する技術を持っている。

華園美沙緒

新任4年目の音楽教師。美人で生徒からの人気が高い。あまり仕事をする姿を見せず、真琴や凛子などに役割を押し付けることがほとんど。

楽園ノイズ/感想・レビュー

ストーリー

音楽と青春をかけあわせた物語になっています。おおまかなストーリーは、学生たちが集まり自然とバンドを結成していくというものです。
三人のヒロインとそれぞれ出逢う典型的なボーイミーツガールのライトノベルの構成で各キャラクターのストーリーも章ごとにシンプルにまとまっていました。
あらすじや試し読みでは女装するという設定で、女装男子の物語の方向性も予測されましたが、そちらの話はメインではありません。もっともそこは大事な部分でもないので、個人的にはあまり気になりませんでした。
作品テーマとコンセプトの芯の部分がブレずにはっきりしており、気持ちよく読むことができました。
音楽がメインだと、アニメやドラマ、ゲームと違って小説では文字だけで演奏を伝えなければならないのですが、さすがにベテラン作家らしい高い表現力で、バンドの熱や空気が文章を通してよく伝わってきました。没入感と高揚感は大変高かったです。バンド経験がある著者だからこその経験と知識がリアルで説得力ある描写に繋がっていました。
読み手が音楽についてわからなくても支障なく面白さが伝わりますし、造詣があるならなおのこと楽しめます。一部少しマニアックで、濃いめの読み味ですが、好きな方には読み応え十分だと思います。
青春部分においても「らしさ」が出ていました。熱さと弱さと爽やかさ、そして温かな感動が濃密に詰まっており、清々しい読後感を得られます。
キャラクター間のやりとりもパターンは決まっているもののテンポも小気味よく、コミカルなシーンも抜かりありません。
全体的にバランス良く非常にハイレベルな作品で楽しく読むことができました。
杉井光氏の作品を読んだことがあり、雰囲気が好きであれば間違いなく虜となりますので、ぜひ手に取って読んでみることをおすすめします。

キャラクター

青春系のキャラクタードラマにおいて必要とも言える丁寧なキャラ描写がひとりひとり過不足なくされていました。
語り手であり、中心となる主人公の真琴もラノベ的なキャラ造形も見事で、好印象でした。
青春を描く上で、感情移入しやすいように心理面も色濃くしっかりつくられていています。臆病なところや憧れ混じりの劣等感などの内面描写も正面から向き合って書いており共感しやすかったです。
鈍感で中性的でなよっとしたありがちな弱みはありましたが、それでも確固たるところも持っており、要所で放つ熱と光は主人公として物語を強く輝かせていました。
華を添える4人のヒロインらも非常に魅力ある布陣でした。バリエーション豊かな可愛さで個性に差別化が図られていました。主人公への辛辣な言い回しも多々見られましたが、不快感は薄く、あまりストレスを感じさせません。悪口一辺倒に寄せず、好意的な台詞も混ぜ込んで、良い塩梅で中和させていました。
全体的に登場人物は少なくありませんでしたが、特に混乱もなく、限られたスポットライトが当たる出番には存在感を主張して、読み手の印象に最後まで残りました。
惜しむらくは、バンドを組むまでがほとんどを占め、バンドを組んでの活動が最後の最後になってしまったので、グループでのやりとりがどうしても限定されたことです。存分に味わうには、若干の物足りなさがありました。個人的に彩りに溢れたキャラ同士の複雑な交わり、いろいろな会話パターンをもっともっと見たい気持ちが湧きました。
そう思えるぐらい読み手も愛着をもてる素敵なキャラクターであると感じました。

ひとくちおすすめポイントまとめ

  • 音楽への強い愛と熱のこもった青春ストーリー!
  • ベテラン作家らしい安定感ある表現力とバンド経験を存分に組み合わせた深みのある演奏描写!

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