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おすすめラノベ紹介/貴サークルは"救世主"に配置されました

貴サークルは"救世主"に配置されました

貴サークルは“救世主”に配置されました (GA文庫)

レーベル;GA文庫
著者;小田一文
イラスト;肋平気
発売日;2021/01/16
関連ワード;現代 ファンタジー 同人 メイド

貴サークルは"救世主"に配置されました/カンタンなあらすじ

同人作家『星夜騎士』が主宰する『星霜煌炎騎士同盟』は即売会で1部の戦果も出ないこともざらなほどの弱小サークルだった。
閑古鳥の鳴くスペース前に珍しく一人の女性が近寄ってきたのだったが、彼女は星夜騎士を見つけるなり、何故か「救世主」などとのたまってきた。
あぶない電波女の気配を感じて関わり合いを避ける星夜騎士だったが、後日再びその女性・時守緋芽にばったり遭遇してしまう。
切迫した様子の緋芽の口から出たのは、魔王が復活することで世界に危機が迫っているというもの。最初は妄言であると信じられなかった星夜騎士であったが、実際に不可思議な現象を目の当たりにしたことで考えを改める。
しかし、やる気になった星夜騎士に求められたのは悪と戦うことではなく、同人誌を100部完売することだった。
魔王と何が関係しているのかも、1部も売れない弱小サークルが達成できるかもわからなかったが、これが世界を救う鍵であることを信じて、星夜騎士は緋芽の協力を得ながら最高の同人誌を創作していく。

 

貴サークルは"救世主"に配置されました/登場人物紹介

星夜騎士 

星夜騎士というネームで活動している底辺大学生同人作家。やや卑屈なオタクだが、『ソラフネ』という作品への一途な愛を誰よりも強く貫く絵師。

時守緋芽

深紅のリボンと赤いブレザー姿の女子高生。タイムトラベラーを自称し、星夜騎士を救世主と呼ぶ。オタク知識には疎いが、吸収力と分析力が高い。

デスメイド

メイドに対してこだわりを持ち、自身でもメイドの格好をするレイヤー。星夜騎士とはよく解釈違いで衝突している。

貴サークルは"救世主"に配置されました/感想・レビュー

同人誌の即売会をメインテーマにしたライトノベル作品です。現代的な舞台に魔王や異形のものといったファンタジー要素を絡ませています。世界を救う物語ですが、その手段が同人誌の製作・頒布に繋げたちょっと特殊な設定です。型から外したシナリオっぽい印象を受けるかもしれませんが、中身はむしろ素直でしっかりした骨子の熱き青春ストーリーでした。
主人公である星夜騎士は特別な力など持たないどこにでもいるような一般オタクです。ちょっぴり頑固で一途な作品愛があるだけで、不可思議な力に頼ることなく目標に向かいがむしゃらに走る姿は素敵です。ここは読者が強い共感を覚えるポイントではないでしょうか。
オタクであることや友達が少ないことなどよくあるラノベ主人公設定なども、いまいち活かし切れず浮くようなありがちとも言える失敗をせず、物語の中で違和感なく馴染んで使いこなされていたのも良かったです。
作者自身がもともと同人活動をされていたらしく、現実の肌で得たものをしっかりとフィクションの世界へと落とし込まれています。作品の同人パートでは実に濃密な表現がされており、力と熱が伝わる面白い青春模様になっていました。クリエイター活動に縁ある人はもちろんのこと、縁の遠い人であってもひとつの良き体験を与えてくれるのではないかと思います。
今作に続きがあるかはわかりませんが、この次が描かれるのであれば、この素敵な同人パートに負けないくらい、非現実の方のパートも色濃いストーリーを是非描いてほしいと思います。
絵であったり、歌であったり『武力』でなく『文化』で敵を制圧するタイプのお話なら、やはり敵勢力の背景を作者はもちろんしっかり練っているのだと思いますが、そうした部分の詳細がこれから見えてくると嬉しいです。
そして、ヒロインの緋芽もまた非現実サイドとして良い設定があるのでそれをこれからもっと活かされてほしいです。例えば何度もタイムリープして何度も同じ結末を繰り返している身であるいう、一種の異常性は良きネタです。尋常ならざる経験を得た普通と違うズレた部分が垣間見えるとキャラクターとしての深みが出ますし、普通の少女的な一面がギャップとなってぐっと映えもしますので、すごくヒロインに可愛くかつ魅力的に感じられるようになります。
2巻以降があると、当然いろいろな部分にスポットを当てていくと思いますので、今後展開されるだろう素晴らしい熱とストーリーを期待したいです。

ひとくちおすすめポイントまとめ

  • 作者の体験から描き出される色濃い同人サークルストーリー!
  • 単純な武力では解決させない文化的な戦い!

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