読む書くノベ楽

ライトノベルを中心とした小説や物語のレビューブログ

おすすめラノベ紹介/現実でラブコメできないとだれが決めた?

現実でラブコメできないとだれが決めた?

現実でラブコメできないとだれが決めた? (ガガガ文庫)

レーベル;ガガガ文庫
著:初鹿野 創
イラスト:椎名くろ
発売日;2020/07/17
関連ワード;学生 ラブコメ

現実でラブコメできないとだれが決めた?/カンタンなあらすじ

リアルとフィクションは全く違う。
そうであるのならば、ラブコメとは架空の存在でしかないのだろうか?
――長坂耕平は、その問いに否を突き付けた。
仮に現実の世界に自然と起きないのであれば、自分で起こしてしまえばいい。耕平は、自らの理想を求めないままではいられなかった。
熱意と執着を持ってインプットとアウトプット、計画と行動を繰り返していく。
そしてある日、耕平は理想とするラブコメシーンを自らの手によって生み出した。
それこそは、明るく清楚なマドンナを屋上に呼び出しての告白イベント。まるで小説の世界のような事実が具現化されたはずだった。
しかし――
「大馬鹿野郎」
目の前に降って湧いたのは、予定外のキャラクターとシナリオだった。


現実でラブコメできないとだれが決めた?/登場人物紹介

長坂耕平

ブコメが大好きなオタクで、それを現実のものにしようとする男。データ分析が得意。

上野原彩乃

1年5組所属。美人で聡明だが、やや理屈っぽくある。甘いものに目がなく、過剰に摂取している。

清里芽衣

1年4組のマドンナ的存在。容姿と性格含めて天使を思わせる完璧女子で、耕平が告白しようとしたメインヒロイン候補。

勝沼あゆみ

4組のクラス内で最大派閥を築いている金髪のギャル。何かと耕平を目の敵にしている。

現実でラブコメできないとだれが決めた?/感想・レビュー

やや異彩を放つ特殊な学園ラブコメ作品になってます。大変個性と挑戦心の強い面白い作風でした。
タイトルが「現実でラブコメができないと誰が決めた?」という思わず目を引くワードで、その内容もラブコメを非現実的と捉えている観念を利用したものとなっています。
学園ラブコメと言えば、これまで多くの作品によって築かれたいわゆる定番的要素があります。例えば複数の美少女ヒロインキャラとイチャイチャしたり、気の置けない親友キャラとドタバタ大騒ぎ起こしたり、学校行事でドラマティックなことが起こったりなどです。ラッキースケベといったお色気系ハプニングなどもお約束でしょうか。
これらはフィクションの世界だからこそ当たり前のように存在し、成立しています。我々もそれらは、現実では都合が良くてほぼあり得ないものの代表と共通認識を抱いており、ゆえにそれを小説の世界に求め、仮想の体験として楽しんでいます。
この作品では、そうした認識をベースにして、設定と物語の流れが構成されています。コンセプトは「ラブコメのシーンやシチュエーションを現実に起こす」というものです。
これによって、「虚構の世界と住人」が「ラブコメという虚構」を必死に作り上げていくという奇妙でありながら、ユニークな構図が生まれました。非常に独特で優れた着眼点による新しい切り口だと感心を覚えます。
決まった枠組みを避けるのでなく、あえて目指すことで逆に新鮮な恋愛ドラマがあります。王道たる定型をしっかり拾って活かしつつ、王道と重ねないそのやり口は巧みで見事でした。
導入部もボーイミーツガールというスタイルをとりつつも、他では見ない形に仕上がってます。ラブコメに常に付きまとうどこかで見た展開という問題も独自の方向性によって自然と乗り越えています。
また、アイデアにのみ勝負を頼ることなく物語を織りなすキャラクターも普通でない魅力をしっかり感じさせてくれました。
いずれの登場人物も、ラブコメ的なテンプレキャラクターを含ませつつも一癖も二癖もありそうな良い味を持っています。それぞれの書き分けもはっきりしており、役割もわかりやすく配置されています。
何より印象的だったのは、主人公の長坂耕平です。彼は本当に気持ち悪くて歪な状態ではありましたが、確かなインパクトを与えてくれました。
無個性とは真逆で、受け身がちとも正反対の素晴らしい行動力と牽引力を有しており、常に作品の中心に立ち、その存在感は終始圧倒的でした。
万人受けするような好感度が高いタイプの主人公ではありませんが、その充溢したエネルギーは実に魅力的で、彼のつくりあげる物語を読みたいと思わせる強い力があります。
並び立つヒロインキャラも負けておらず、特に上野原彩乃は、動きも含めて好印象でした。
都合よくも主人公のことを受け入れてくれる寛容性と主人公を陰になり日向になりサポートする献身性といったありかたは実に典型的ヒロイン像の体現でした。
ブコメヒロインっぽくない現実的側面とラブコメヒロインっぽい虚構的側面の交錯のさせ方が絶妙で、この作品ならではの可愛らしさがよく引き出されています。もう一人のヒロインキャラクター清里芽衣との対比という面でもばっちりでした。
主人公、ヒロインのキャラが立っており、ストーリーの基盤も豊かな発想に支えられ、総じて非常にバランス良く完成度の高い作品となっていました。
少し人を選びそうな部分を挙げるのならば、個性的でやや尖っているところやパロディ面が若干強いところでしょうか。
他所の作品の名前やネタをあえて使用すること自体は、内部で「長坂耕平が生きる現実」と「フィクションの世界」の階層を作り出す効果もありますので、一概に悪い部分であるとは言えません。しかし、やや用量が過剰に感じて、一部別の表現のほうが受けの幅が広がったのかなと個人的には感じました。
良くも悪くも著者のラブコメ愛がいっぱい詰まった作品だと思います。ラブコメが好きでよく読んでいる方ほど刺さりやすいはずですので、王道を愛しつつもちょっと変化球的なラブコメも味わいたい方には是非おすすめしたいです。 

ひとくちおすすめポイントまとめ

  • 独創的な着眼点で描かれたラブコメをつくるラブコメストーリー!
  • このキャラが紡ぐ物語を見たいと思わせるパワー十分な主人公と魅力的なヒロイン!

 

ブログランキング・にほんブログ村へ