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10分でわかる初心者のための小説の書き方

小説の書き方・初心者のため物語創作基本編

 

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物語と創作

 

小説に限らず、ドラマや映画や演劇、漫画やアニメ、一部のゲームなどには「ストーリー」があります。
それらの素敵なお話は私たちに一つの体験を与え、心を激しく揺さぶり、時には笑ったり、時には泣いたりと様々な感情が引き出して、楽しませてくれます。
やや大仰な言い方になりますが、物語には心を掴んで動かす魔法のような不思議な力があります。物語の作り方を求めているということは、おそらくそんな変化の魔法を手段として行使し、何かを成し遂げたい目的を抱いているということでしょう。
しかし、お話をつくりたいという思いを抱いたはいいものの、初心者の方にとっては、簡単な話ではありません。どうやってお話をつくったらいいかわかりませんし、なんとなく作ってもうまく作れないといった悩みや迷いを抱えてしまいがちです。
この記事では、0からできるお話の作り方についてを扱っていきたいと思います。

 

物語創作の基本――お話の『素』

 

いきなりしっかりした形の物語はつくれません。物語を組み上げるためには物語の欠片が必要で、その欠片をつくるためにはお話の『素』を準備しなければなりません。

 

お話の『素』その1:何を伝えたいのか知る

 

どんなものを書きたいですか?物語をつくりたいということは、必ず何か自分がこんなお話つくりたいと思ったものを持っているはずです。頭の中には物語の形を成していないけど、形にしたいものが思い浮かんでいる状態でしょう。
このアイデアを出していきます。それが、単語でも、キャラクターでも、ジャンルでも、あるいは台詞でも、シーンでも構いません。
ここでは形になるかは考えず、心の赴くまま生み出していきます。それがこれから使う大切なお話の『素』になっていきます。
もしも描きたい明確なテーマがはっきりとあるのならば、理想ですが、多くの初心者にとってそれは簡単なことではありません。
最初は、曖昧でもぼんやりしたもので問題ありません。「かっこいい物語を書きたい」や「甘い恋のお話を書きたい」といった漠然としたものでもいいです。
大切なのは、自分が興味あるもの、書きたいこと、作りたいこと、そして伝えたいことが何なのか見つめて、探ることです。
作品をつくる第一歩として、自分が何を書きたいのか自身に向き合って問うてみましょう。
お話を作るうえで一番恐ろしいのは、何を書けばいいのかわからない、何を伝えたいんだっけと迷子になってしまうことです。
どんな物語をつくりたいかの答えは、全て自身だけが持ってます。だからこそ問いかけることを常に続けてください。それがお話の『素』を溢れさせていきます。


お話の『素』その2:誰に伝えたいか

 

何を作りたいか考えたその次はそれを誰に伝えたいのかを考えてみましょう。
これは物語を作るうえで、とても大切な観点です。しかし、初心者の方は何をという部分については思い至ることができても、誰にという部分に関しては意識が抜けてしまうことが多いです。
物語というものは、決して自分だけで成り立つものではありません。そこには受取り手が必ず存在し、伝わることによって、はじめて成立します。
ですので、物語をどう描いていくか、どのような方向に向けていくかは、読者の存在を位置づけた時、はじめて本当の意味で捉えることができるものです。
何を届けるか、誰に届けるか、この両輪があってこそ物語は形を成すことをひとまず念頭に置いておきましょう。


物語創作の基本――物語の欠片

 

お話の『素』を準備できたら、今度はそれらを物語の欠片へと形作っていきます。
ここまででアイデアを出して、おおまかな方向性が見えてきたところです。ここから物語の基礎となる部分を作成しましょう。

 

物語の欠片その1:キャラクターを描く

 

お話の『素』を材料に、物語のメインとなるキャラクターを創造していきます。物語とは、単体あるいは複数の対象にフォーカスし、その変化の旅を描いていくものです。
キャラクターがいなければそこに物語は生まれません。特に中心となり、欠かせない存在となるのが、主人公です。主人公は物語において顔の部分となりますので、はじめのうちに作成するとわかりやすいです。
名前、性別、年齢、職業、好きなこと、嫌いなこと、持っているもの、足りないもの、生い立ちなど設定し、個性がわかる形にしましょう。
がちがちに細かく固める必要はありませんが、それでも一定程度キャラを固めていないと、後で行動がブレたり、あるいは身動きが取りづらくなります。
キャラクターは基本的にストーリーを引っ張る存在になっても、ストーリーの都合に歪められるような存在にならないよう意識することが必要です。

 


物語の欠片その2:キャラクターを動かす

 

キャラクターが創造できたら、それに動いてもらいます。物語とは基本的に変化の旅ですから動きがなければ、何もスタートしません。
しかし、あらゆる物は理由もなく動いたりしません。ですので、動く理由が必要です。これは物語の『目的』と呼ばれるものになります。
例えば、有名なおとぎ話で桃太郎があります。桃太郎の目的は「鬼退治」です。メインキャラクターたる桃太郎が鬼を倒すという目的に沿って動いていきます。またシンデレラでは、「お城の舞踏会に参加する」、赤ずきんでは「おばあさんの家にお使いにいく」といったように、目的をもとにキャラクターが動いて、物語は展開していきます。
小さなものから大きいもの、表向きのものから裏向きのものまで目的をキャラクターに与えましょう。
そこからキャラクターは歩き出してくれます。そして、その軌跡が物語をつくる欠片となります。
一つの行動が起きれば、その目的に向かう過程や達成の結果の中で、さらに別の目的が生まれたり、あるいは別のキャラクターに影響を及ぼしたり、連鎖的に波及し、それが大きな流れへとなって、やがて世界がつくられていきます。


物語創作の基本――物語の組み上げ

 

物語の欠片ができたら、あとはそれを一つの物語に仕上げていきます。
キャラクターたちが旅立ち、動き出せば、それだけでも最低限の話の形にはなります。もしも、誰かの心を強く動かすことを求めるのであれば、ここからは、この道程の一部に少々の工夫をつける必要がでてきます。

 

物語の組み上げその1:「起伏」をつくる。

 

物語をつくる際に知ってほしいことの一つは『起伏』です。
起伏とは高いところと低いところがあるという意です。これを物語につくっていきます。
キャラクターが歩いてくれたとしても、仮にその道程がずっと平坦であれば、それは平易なものとなります。しかし、この先それしか続いていかないのであれば、その道はワンパターンで何も変わり映えがしない退屈なものになってしまいます。これがお話に起伏が必要とされる理由です。
それでは、起伏の高低差とは物語においていったいどのように生むものなのでしょうか。これは、正負(プラスマイナス)の方向への進行によって基本的につくられます。つまりはポジティブとネガティブな状態への上下が起伏と呼ばれるものです。

シンデレラで例をあげます。

  • シンデレラは、継母と姉により、不憫な境遇にいました。(負の状態
  • 魔法の力によって、シンデレラは城の舞踏会へ参加することができ、そこで王子に見初められました。(正の状態への上昇
  • しかし、魔法には時限があり、シンデレラは家へと戻らなければなりません。(負の状態への下降
  • 王子がガラスの靴を手掛かりに迎えに来てくれました。(正の状態への上昇

このように全体の流れの中で、正負の上がり下がりの起伏が見られます。
ここで代表としてあげたシンデレラは、非常に綺麗でわかりやすいお手本のような起伏になります。そのため、昔話になりますが、現在においてもシンデレラストーリーと呼ばれて、同様の起伏が、探すといろんな作品に使われています。
例えば現代のweb小説でブームになった「異世界転生」ものなどは、報われない境遇から不思議な力によって、別世界で幸福を掴んでいくというまさに典型的なシンデレラ形式です。

起伏は振れ幅が上下に大きいほど、物語は波乱万丈なものとなります。しかし、勘違いしてはならないのは振れ幅が大きければ大きくしただけそれで面白くなるのかというと必ずしもそういうわけでもない点です。
例えば、ホラー作品などのストーリーは正負の縦幅自体が特別大きいものでありません。多くは日常という正負の中間の地点から、殺人鬼や幽霊のような恐怖の対象に負の状態に落とされた後、再び日常にかろうじて戻るか悲劇的な結末になるかというような内容です。ここに大きい負の状態はありますが、反対にわかりやすい幸福のような大きな正の状態への移行が用意されているかというと、そうではないことが見えます。
ホラー作品は日常と非日常の正負の落差とそしてホラーパートでの恐怖の対象に襲撃されている状態と危機の回避をして一時的な安息を得ている状態との正負の連続で細かな起伏をつくりながら進めていき、平坦でなく面白い物語を演出しています。起伏の上下は単純な大小だけが幅の出し方ではないとうことです。
このように多くの作品には起伏が存在し、行きつ戻りつしながら一本調子で簡素なストーリーにならないよう工夫がなされています。
物語の創作にあたっては、はじまりや結末の位置がどの状態に位置するか、その間の正負の方向をどう上下させて、起伏の変化をつけるか意識してみましょう。単純ではありますが、これだけで、面白く作りやすいものになります。


物語の組み上げその2:『障害』をつくる

 

『起伏』の要素だけではまだやや不十分です。キャラクターの歩む道には適切な『障害』の配置が必要になります。
一つイメージしてほしいのですが、目の前で誰か自分のよく知る人物が坂道を歩いているとします。もしその人の足元に小石が置いてあって、躓き転んでしまったらどうでしょう。
ぷっと噴き出して笑いますか。驚き戸惑いますか。大丈夫だろうかと転んだ人を心配しますか。誰がこんなとこに石を放置したのかと憤りますか。立ち上がってくれるよう応援しますか。
細かな背景に左右されるにせよ、その光景に何かしら心が動かされるものです。これは問題なくその人物が歩いているだけでは決して発生しない心情です。
これが意図的に障害を配置する意味です。起伏のとこでも説明しましたが、ただ平坦な道をずっと歩ませているだけでは、退屈です。何か起こしてこそドラマティックなものが生まれます。
仮にはじめは平社員で、最終的に社長へと出世するお話があるとします。これには正の状態への上昇による起伏の高低があります。
しかし、もしも普通に年を重ねて出世して、上に気に入られて出世してと問題なくトントン拍子に社長になったという内容ではどうでしょう。ここにあるのは、またも一本調子による味気ない物語の様子です。
ですので、多くの作品は目的の前に立ちはだかるように困難な課題を取り入れます。
出世をするにしても、ライバルの存在や邪魔しようする上司や扱いづらい部下がいたり、そして難しいプロジェクトや無茶振りする取引先などがあったりと簡単に物事が運ばない仕掛けがあります。
キャラクターの足を引っ張り、追い詰めていくことはその先にある目的の価値や乗り越えようとするキャラクターの輝きを高めてくれます。
障害は様々な種類があるだけに適切な配置や順序を掴むのが難しいかもしれません。もしも、どれを扱うべきかわからない場合、どれを最大の障害として目的の前に置くべきか迷ってしまった場合、物語の主人公にとって「己自身こそが最大の敵」となるよう考えて障害を置くことが望ましいです。これは端的に言ってしまうと「葛藤」と呼ばれるもので、物語を盛り上げる演出において覚えていてほしい障害の要素です。
葛藤とは、心中に異なる思いが対立して、その選択を迫られることです。選択は重大なものあればあるほどよいです。
例えば、今日つけていくネクタイの色をどうするか迷うというのは葛藤ではありますが、障害としての葛藤ではないです。
出世する中で、会社の不正を知り、それと向き合い告発するのが一つの選択肢。だが、その不正が明るみになることは会社の屋台骨を揺るがす事態を招く恐れがある。といった利益と正義を天秤にかけるような状況が一つの葛藤の例です。ここにお世話になった先輩が関わってるなどの要素も絡めるとよりジレンマが引き立ったりします。
葛藤はキャラクターの内面を深く表現するための最良の方法です。目標に至るために葛藤に苦しみ、それでも答えを出していく過程が強い感情移入を起こしてくれます。
忘れないでほしいのは、障害とはあくまできっかけであり、手段でしかないということです。大事なのはそれによって齎される変化のほうを考えることです。
障害に直面した時、立ち向かう時、そして乗り越えた時のそれぞれがキャラクターにも、読み手にも大きく価値ある変化を与えていくものとなります。

 

物語の作り方を学んだら、創作と分析を繰り返そう

 

自己を見つめ、読み手を意識し、キャラクターを作成し、目的に沿って動かして道を築いていく。その道程が起伏に富んで、障害があれば、なお良い。これが物語の基本でした。
物語を作りたいと思い、作り方の基礎がわかれば、後は実際にそれをどんどん形にしていくだけです。作らなければ結局はじまりませんし、それが最も優れた理解の手段でもあります。
もちろん最初から、完璧な物語はできません。しかし、まずは書きあげてみることが一番大事です。苦しい部分、迷った部分、失敗かなと思った部分も創作にはつきもので、よりよい作品にするための糧になっていきます。
物語に欠けているものがあると気づけたのなら、欠けている原因をとことん探ってみましょう。
自分の作品を見つめ、他の人の作品も見つめ、そうした分析からまた創作に移り、創作する中でも自己を分析し、読み手も分析して……そうして分析と創作を相互に重ねていくことで、作品と自分は成長していき、書きたいと心に抱いた形通りの物語がやがて紡がれていきます。
もし、長い物語創作の道で進む先を見失いそうになったら、この物語の基本に立ち返ってみてください。

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