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おすすめラノベ紹介/八城くんのおひとり様講座

八城くんのおひとり様講座

八城くんのおひとり様講座 (オーバーラップ文庫)


レーベル;オーバーラップ文庫
著者;どぜう丸
イラスト;日下コウ
発売日;2021/6/24
関連ワード;ラブコメ 学生 ぼっち リア充 青春

八城くんのおひとり様講座/カンタンなあらすじ

生粋のぼっちキャラである八城重明がいつものように教室で一人で過ごしていると、クラスメートでリア充グループに属する花見沢華音から突然相談を受ける。
それは、偶には一人になりたいが、一人だと何をしていいかわからないというリア充ならではの悩み――お一人様での過ごし方を教えてほしいというものだった。
八城は、華音にひとりカラオケをはじめとして一人ならではの過ごし方やマインド「ぼっち術」を身に着けさせていく。
華音に訪れた変化をきっかけに、彼女の友人のリア充や転校生たちも関わるようになっていき、八城のもとには人間関係の悩みや問題が次々と舞い込んでくる。

八城くんのおひとり様講座/登場人物紹介

八城重明

基本ボッチ属性の草食系男子。読書とサイクリングが趣味で一人で過ごすことを全く苦にしないメンタルをしている。

花見沢華音

コミュ力が高くクラスの中心である陽キャリア充グループに属する一人。幅広い交友を持つ反面、素の自分を晒せないことや自分の時間がもてないことを悩んでいる。

威堂智風

華音の親友。快活でボーイッシュなスポーツ系リア充。仲間想いで曲がったことは嫌いな正義感の強さを持つが、やや融通が利かない部分がある。

佐藤柚月

転校生。内向的な性格で、それがために以前の学校では交友関係がうまくいかなかった。内気な自分を変えたいと思っている。

羽鳥幸斗

リア充グループのリーダー的存在。思いやりがあり、剣道部所属の爽やかなスポーツマン。


八城くんのおひとり様講座/感想・レビュー

いわゆるぼっちとリア充の陰陽をテーマにした青春ラブコメものになります。ぼっちを扱った学園ラブコメは近年のライトノベル界隈では非常にポピュラーな領域と言え、多数の作品が登場してごった返しています。
まさにレッドオーシャン状態であり、ニーズが多い一方で競争が激しく、そのため作品ごとに独自に特色を出して差別化を図ろうとしています。
この作品においても当然そうした武器、ユニークな部分は備わっており、新しい部分を開拓せんとする意欲がしっかり見られました。
著者が描こうとしたのは、スクールカーストにありがちな確執をなくした新たな視点による世界です。
学生生活における一軍や二軍といった序列や階級を扱うと「妬み」や「僻み」という負の部分が露わになることがほとんどですが、この作品ではぼっちものには珍しくそうしたものが排されており、ほとんど扱われません。
ネガティブさが少ないので、全体としてさっぱりとした嫌みのない読みやすい内容になっています。どちらのサイドも否定せず、おおらかな受容的な態度をもって不和の先を進もうとする関係は非常に面白く、興味深い試みでした。
ただ、せっかく魅力と個性溢れる素敵な世界でしたので、もう少し作中内の表現や描写でわかりやすくもっとダイレクトに感じられても良かったのかなと思ってしまいました。個人的には世界の伝わりが全体的にいまいち弱かった点の不満は少々残りました。
そして、この作品には上記とは別にもう一つ著者が仕掛けたユニークな点があります。それは、ヒロインの見せ方です。こちらもラブコメとしては珍妙な手法で、大きく関心いたしました。
小説の中でヒロインの可愛らしさの表現方法は一つに限りません。必ずしも直接的でなければならないわけではありません。情報量を操作し、想像の余地を持たせることも大事です。
ネタばれになると魅力が半減してしまうため、あまり詳しく書けませんが、ラノベというキャラクター小説としてのギリギリラインを攻めながらも、個性と存在感を主張し、際立たせるやり方は個人的なツボにはまりました。
ヒロインのことが気になってページをめくる手が止まらないのが本当に心地よかったです。
こちらに関しては、ぜひ実際に作品を読んで確かめていただけたらと思います。ありがちなボッチ系学園ラブコメに見せながらも、とても独創性の詰まった素晴らしい作品でした。

ひとくちおすすめポイントまとめ

  • スクールカーストを新しい世界で描こうとする意欲的な作品!
  • 著者ならではユニークな手法でのヒロインの描き方!

 

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