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おすすめラノベ紹介/時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん

時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん

時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん (角川スニーカー文庫)

レーベル;角川スニーカー文庫
著者;燦々SUN
イラスト;ももこ
発売日;2021/3/1
関連ワード;恋愛 学生 ロシア 生徒会

時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん/カンタンなあらすじ

中高大一貫の名門私立征嶺学園に通う久世政近には、一年以上にわたって隣同士に座る女子生徒がいた。
アーリャことアリサ・ミハイロヴナ・九条。学年トップの成績と誰もが羨む美貌を持ち、その上、真面目で努力家と非の打ちどころがない。やる気なく怠惰に学生生活を送る劣等生の政近とは対極の存在だ。
隣席ゆえか政近のだらしない生活態度を目敏く見つけてはアーリャは、それを正すよう口を出してくる。政近は基本それを聞き流していくのだが、お小言が繰り出される合間に、度々どうしても聞き逃せない言葉が挟まれた。
「Милые」――アーリャが時折放つのは、彼女の父の国の言葉、ロシア語。
日本人であり、学業もいまいちな政近がわかるわけないとアーリャは本音をそこにそっと忍ばせる。
だが、政近はロシア語だけは祖父の影響で取得済み。彼女が何を言っているのか、その全てを理解していた。

時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん/登場人物紹介

久世政近

オタク趣味を持つ征嶺学園一年生。中学生の頃は生徒会に所属していたが、今では怠惰な学園生活を過ごす。ロシア好きの祖父の影響で小学生の頃からロシア語をマスターしている。

アリサ・ミハイロヴナ・九条

父親がロシア人で、母親が日本人であり、両方の言語に堪能なバイリンガル。学業優秀かつ運動もこなせる才女で、名門の征嶺学園でも屈指の成績を誇る。愛称はアーリャ。

周防有希

華族である周防家の長女。征嶺学園の中等部、高等部と生徒会役員を務める品行方正な淑女で学内の評判はすこぶる高い。政近とは幼少の頃より非常に親しい間柄。

時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん/感想・レビュー

タイトルを読んでの通りロシア系の美少女とイチャイチャすることがメインの学園ラブコメになります。いわゆる乙女の本音と建て前を知るタイプのお話です。ギミックにはロシア語という異国の言語を用いています。
ブコメとしては、あらすじから抱かせる期待に違わず心ときめくデレ模様がしっかり楽しめます。また、いろいろな細かい工夫やバランスに気をつかわれているのが見られました。
このジャンルにあまり触れてこなかった人より、ある程度好んで読んできた人の方が楽しめる作りだと思います。もちろん初心者でも十分楽しめるのですが、ラブコメもののパターンを読むのを愛しつつも少しマンネリを打破する何かが欲しいくらいの人にはかなり刺さる作品になっているのではないでしょうか。
物語では、開始時点でヒロインであるアーリャとは既に知り合っており、主人公に対する好感度も高い状態ではじまります。シチュエーション達成のために初期から整えた形です。メリットは段階を踏むことなくおいしいところを手早くかつ手軽に味わえます。反面としては、進展と上昇の部分が描きにくくなるため、停滞感が漂いやすいリスクも孕んでいます。特に本音を隠すタイプの設定は素直にしにくいこともあり、留まる傾向が顕著に現れます。
基本的に進めず、焦らすためには、仕掛けが用いられ、それがラブコメでは往々にして「鈍感・朴念仁」であったり、あるいは「優柔不断、不誠実」といった形で出がちです。それがある一点に達し、行き過ぎれば、途端にキャラクターの魅力を損なうのは言うまでもありません。特に主人公に抱く不快感は重要で、読むのに苦痛が勝る作品になることもしばしばです。
この作品では、テンプレを巧みに使いつつも、塩梅の調整をされて、そうした主人公の不快感が出すぎないように配慮されてました。作中「ラブコメ主人公やってはいけないこと」などとネタにしているのが見られるあたりは、かなり意図した形と思われます。
やる時はやる主人公でもあり、ヒロインが惹かれる人柄も示されており、非常に好感を持ちやすいキャラクターでした。設定紹介や冒頭部のみではわかりにくいですが、少しずつ良さが出てくるタイプで、個性もあります。
停滞感に対しても、飽きや慣れによるマンネリが起きないように節々で刺激を与えてくれました。恋敵を敵視するという一見ありがちな動きも、面白い関係性に変えて描いています。素直になれない系ヒロインと嫉妬の親和性を見せつつ、女子に囲まれた主人公の不誠実さを感じさせない要素を上手く共存させたのも興味深かったです。愛情と空回りを同時に楽しめる実にラブとコメディが交じり合った素敵なシーンとなっていました。
ストーリーは上述のとおり、全体として高い完成度でおすすめなのですが、文章に関しては、やや独特な部分が見受けられたため、ここは人それぞれちょっと好き嫌いが出るところかもしれません。
表現の一つの例を上げるなら「世の百合豚が見たら歓喜しそうな絵面だった」などの情景描写については癖があり、かなり好みがわかれそうに思われます。
仮に馴染めず、受け入れがたくても、コミカライズかアニメ化などで解決する部分ではありますので、そちらのメディアが出てから楽しんでみるのも一つかもしれません。
最後は、個人的な好みになりますが、ヒロインのデレが多めでかわいかったのですが、だからこそもう少しメリハリが効いているほうが、より好きだったかなという感じです。
ロシア語でデレるのみならずデレてるので、好意主張は限定にしてほしかったのが正直なところです。括弧内でのアーリャの心の中の台詞などいくつかあげられるのですが、そこを抑えて単にロシア語での本音だけが彼女の気持ちを伝える言葉であった方が破壊力と価値が増した気がします。
とはいえ、あくまで自分の好みであり、現在の主流的には、括弧内での内面台詞も加えるというこれくらいわかりやすく好意主張を多めに入れこんだ甘味強めの方が受けがいいのかなと思います。
ストーリーとキャラクターは非常によく、満足できるラブコメだと思います。秀逸な作品でしたので、次も期待したいと思います。

ひとくちおすすめポイントまとめ

  • ヒロインの建て前のツンと本音のデレの魅惑のコントラスト!
  • 個性を持ちつつ好感を抱かせるやる時はやる系主人公!

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