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おすすめラノベ紹介/鎌倉源氏物語 俺の妹が暴走して源氏が族滅されそうなので全力で回避する

鎌倉源氏物語 俺の妹が暴走して源氏が族滅されそうなので全力で回避する

鎌倉源氏物語 俺の妹が暴走して源氏が族滅されそうなので全力で回避する (ダッシュエックス文庫)

レーベル;ダッシュエックス文庫
著者;春日 みかげ
イラスト;猫月 ユキ
関連ワード;歴史 武士 戦 妹 源平

鎌倉源氏物語/カンタンなあらすじ

叔父である新宮十郎行家が伝えた『以仁王の令旨』によって源頼朝は平家打倒の決起を促される。
血筋は立派でも、生来ビビりで武士らしくない頼朝は戦に興味がなく、全く乗り気でなかった。しかし、舅である北条時政が話にのったことによって、立場上、坂東武士ら関東武将の総大将として挙兵を余儀なくされる。
血の気が多い集団に囲まれ、石橋山の戦い富士川の戦いと血なまぐさい争いに巻き込まれた頼朝は、その最中で馬から転落して失神してしまう。
三途の川を渡りかける頼朝の前に現れたのはかつての恩人である平清盛だった。清盛はすでに病死しており、死後の世界で知ったという史実――少し未来の情報を頼朝へと授ける。
このままいくと平家も源氏も族滅の危機に瀕することを知った頼朝は、なんとしてでもそれを回避すべく奔走することになる。

 鎌倉源氏物語/登場人物紹介

源頼朝

源氏頭領源義朝の三男。北条家によって貴種として担がれ、坂東武士を率いることになる。乗馬もままならないほど武芸の才に乏しいが、機転が利き、気配りも上手。

源義経

頼朝の妹。兄とは反対に戦上手で軍才に秀でる姫武者。幼少より家族の愛情に飢え、かなりの兄想いに育つ。

北条政子

伊豆国豪族である北条時政の娘。恋愛結婚で頼朝の正妻になる。非常に嫉妬深い性格をしており、浮気を許さない。

武蔵坊弁慶

遮那王四天王の一人。薙刀を操る尼僧。義経を姉貴分として支える。

那須与一

遮那王四天王の一人。那須家の十一番目の子で弓の名手。

伊勢三郎

遮那王四天王の一人。火つけや盗みを得意とする盗賊。小さいことを気にしている。

佐藤継信佐藤忠信

遮那王四天王の双子。奥州藤原に仕えていた幻術を扱う狐の妖怪。

鎌倉源氏物語/感想・レビュー

織田信奈の野望シリーズなどで知られる春日みかげ氏の作品です。今回もカテゴリーとしては著者にとってお家芸ともいえる歴史ものになります。
堅苦しくとっつきにくいと思われる歴史の話ですが、それを砕きつつ、ライトノベルという娯楽にあう味付けになるよう仕立ててあるのが特徴です。お馴染みの女体化要素の扱いも実に手慣れたもので安心感があります。
今作の物語の題材は、源氏と平氏のお話です。歴史の武士で花形と言えば、やはり室町・江戸あたりがあがります。創作界隈では戦国武将や新選組などが人気かつ華やかで、その点から見ると平安・鎌倉というやや外した時代は一見地味に思えるかもしれません。
しかし、牛若丸も知名度十分の歴史的人物ですし、武家政権の成り立ちや、粛清アンド族滅の身内間闘争劇といい楽しいテーマもたくさんある時代です。著者もそうした凶暴な坂東武士や内輪もめの闘争を重点的に面白おかしく描いていました。
主人公を兄の頼朝にしたのもユニークで、さらにヘタレや臆病とキャラ付けしました。このビビりキャラというのは、人によってはマイナスなイメージを抱くかもしれません。ですが、この作品の頼朝は決して後ろ向きでなく、消極的でもなく、目的に対してひたすら前向きに積極的に解決しようという姿勢を見せてくれますので主人公として好印象を受けました。時代の英傑らしさを損ないすぎず、明るさ、愉快さを混ぜ込んでいて好きです。
作品としてやや惜しい点をあげるとすれば、テーマ上、一冊での詰め込みが過多になってしまった点でしょうか。
というのも内容としては歴史上の頼朝の伊豆国での挙兵から文治の勅許(守護・地頭の設置)という幕府成立あたりまでを一冊で扱っています。年数でいえばおよそ5年です。そこをギュッと押し込もうとすれば必然割愛しなくてはならないものが出てきます。
戦の一つ一つを細部まで描写していては、ページが足りませんし、多くの登場キャラクターのエピソードも挟んでいる余裕がありません。メインたる兄妹ストーリーを成立させたい都合上、急ぎ足気味であらすじ的になる箇所もでますし、薄い部分も端々で見られました。
著者も遮那王四天王のストーリーを泣く泣くカットしたとあとがきで述べていましたが、ページの都合で小奇麗にまとまった反面、濃密な描写を求めている人には少し物足りないかもしれません。
とはいえ、脇道にそれがちのまどろっこしいタイプの物語が苦手な人には良いストレートさがあると思います。中心たる頼朝と義経の確固たる軸からはブレず、書くべきことは書いてます。
歴史改変ものが好きな方や、鎌倉付近の歴史に興味がある人はきっと楽しめる作品だと思います。

ひとくちおすすめポイントまとめ

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