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おすすめラノベ紹介/千歳くんはラムネ瓶のなか1巻

千歳くんはラムネ瓶のなか

千歳くんはラムネ瓶のなか (ガガガ文庫)

レーベル;ガガガ文庫
著者;裕夢
イラスト;raemz
発売日;2019/06/18
関連ワード;学生 青春 ラブコメ リア充 オタク

千歳くんはラムネ瓶のなか/カンタンなあらすじ

県内の進学校に通い、運動神経も抜群、おまけにイケメンという根っからのリア充人間・千歳朔は仲間と一緒に学校生活を全力で謳歌していた。
2年に進級し、新しいクラスでも自然と委員長の役割に就くが、担任の『蔵セン』こと岩波蔵之介から厄介な仕事を押し付けられてしまう。
内容は、不登校のクラスメート・山崎健太の問題解決。事情を知るべく、彼の家を訪ねるも、拗らせた陰キャオタクである健太に陽キャリア充の朔は、敵も同然の扱いを受けて、頑なに接触を拒絶される。
朔は仲間の力を借りつつ、時に強引な手法をとりながらも、健太と相互の理解を深めていく。そして問題を解決するため、リア充の生き方というものを指南するのだった。


千歳くんはラムネ瓶のなか/登場人物紹介

千歳朔

進学校藤志高校の2年生。勉強も運動もできる高スペックの人気者で、スクールカーストのトップに君臨する。良くも悪くも話題になる学校の中心的存在。

柊夕湖

藤志高校2年生、テニス部所属。華やかなる天性の魅力を兼ね備えた女子カーストのトップ。自他ともに認める「朔の正妻」。

内田優空

藤志高校2年生、吹奏楽部。穏やかで派手さは控えめなものの千歳や夕湖のようなトップリア充とも遜色なく付き合えるグループの良心。

青海陽

藤志高校2年生、女子バスケ部。運動神経抜群のスポーツ少女。悠月とは良いコンビとして知られている。

七瀬悠月

藤志高校2年生、女子バスケ部。思考が朔と近いタイプのリア充。夕湖に劣らず人気が高い。

西野明日風

朔の一つ上の先輩。不思議な空気を纏った女性で、朔にとっては、憧れの人。

浅野海人

藤志高校2年生、男子バスケットボール部のエースを張る高身長のスポーツマン。理屈より行動が先の真っすぐな体育会系男子。

水篠和希

藤志高校2年生、サッカー部の中心選手。計算高くドライな一面を持った、女好きのイケメン。

山崎健

千歳たちのクラスメートで引きこもりの不登校。オタク趣味でひねくれた性根をした典型的なカースト底辺層の少年。

岩波蔵之介

国語を担当する教員。野暮ったい身なりであるが、指導面のバランス感覚が絶妙に優れ、生徒からも慕われている。あだなは「蔵セン」。


千歳くんはラムネ瓶のなか/感想・レビュー

第13回小学館ライトノベル大賞の優秀賞の作品になります。単純に光るものがあって当然になりますが、ライトノベルとしては、大変意欲的で挑戦心に満ちた作品であるという印象を受けました。
今作の個性的でまず目立った特徴として、主人公がいわゆる『リア充側』であることが一つあげられます。そして、それによってコミュニティが話の中で作り上げられる以前に、すでに出来上がった状態であること、また、コミュニティがあることで必然的にヒロイン含め登場人物が多いのに、全員陽キャリア充と属性が近似してキャラ被りも厭わないことも珍しいです。ヒロインが多く青春ラブコメぽく見せていますが、話の中で恋愛にフォーカスを当てたり、前面に押し出したりをほとんどしていないことなども、いわゆるラノベの常道から少し外れた面白い点かもしれません。
ラノベ読者層のメインであるオタクの微妙な領域に触れる気概もひっくるめてなかなか踏み込んだ作品でありながらも、エンタメとして楽しめる形にしっかりつくられております。ただ新鮮さや奇抜さのみを走らせたものではありません。シンデレラものとヒーローものという受けの良い王道物語を複合して、さらにエッジを効かせたつくりに仕立ててます。
青春ものとしてもハイレベルで、未熟さや青臭さの中で確かなきらめきを放つ若者の姿が作中で気持ちよく描かれています。
話題にも人気にもなり、各所で称賛される本作ですが、しかし万人に薦められるものであるかというと、難しいところです。一癖ありそうというのは、おそらく察せられると思います。基本的に合う合わないは、試し読みで読める導入部分を判断基準にすると良いのではないでしょうか。
その冒頭というのも、主人公と行きずりの女生徒とのやりとりから始まるという言葉で表すだけでもなかなかに異色で面白いはじまりなのですが、ここは、主人公「千歳朔」という存在と、これからの素敵な予感を読み手に鮮烈に与える部分です。もしも、ここを読んで主人公に少しも興味を抱けなかったのなら、おそらくその先をいくら読んでも仕方がないのかなと思います。そうした刺さる人をはっきり選べる部分もエンタメとして、上手く作られている証左の一つと言ってよいかもしれません。
個人的には、審査員に「問題作」と評され、編集部の評価が割れたという手が加えられていない応募作の状態というのも読みたくなりました。そんな評価の難しいものであった作品をこうして多くのラノベ読者に受け入れられる形に昇華し世に出した著者と編集は素晴らしいなと感じます。そうした著者の持つ輝きと、それを見出して磨く編集の力をこれからしばらく続いていくだろう本シリーズで見ていきたいなと素直に思える素敵な良作品でした。

ひとくちおすすめポイントまとめ

  • リア充サイドを主人公にした異色の物語!
  • 世の多くのラノベ読者に受け入れられる形で送り出した著者と編集の手腕!

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