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おすすめラノベ紹介/他人を寄せつけない無愛想な女子に説教したら、めちゃくちゃ懐かれた

他人を寄せつけない無愛想な女子に説教したら、めちゃくちゃ懐かれた

他人を寄せつけない無愛想な女子に説教したら、めちゃくちゃ懐かれた (角川スニーカー文庫)

レーベル;スニーカー文庫
著;向原 三吉
イラスト;いちかわ はる
発売日2021/3/31
関連ワード;学生 青春 恋愛 不良

他人を寄せつけない無愛想な女子に説教したら、めちゃくちゃ懐かれた/カンタンなあらすじ

大楠直哉は、品行方正、成績優秀と絵にかいたような模範的優等生だ。クラス委員長として、同級生のみならず、教師からも高く信頼され、何かと頼りにされることも多かった。
ある日、直哉が担任の城山から相談されたのは、クラスメートの江南梨沙のことだった。江南は、直哉とは対照的に素行不良の問題児として知られている。サボりや遅刻も当たり前で、進路希望の面談もただ一人進まず学校として好ましくない状態にあった。
放課後、直哉は江南と話してみるが、忠言はやはり素直に聞き入れてもらえなかった。そればかりか、直哉の態度や言い方に対しても不満を露わにし、逆に批難を浴びせられる。
そうした江南の自分勝手な振舞いを直哉は看過できず、思わず自分の中の感情を剥きだしにして説教をぶつけてしまう。
話し合いとしては失敗どころか最低なやりとりで終わってしまったと直哉は悔やむが――その日から、江南の素行、そして直哉に対する態度は、なぜか変わっていく。

他人を寄せつけない無愛想な女子に説教したら、めちゃくちゃ懐かれた/登場人物紹介

大楠直哉

クラス委員を務める優等生で成績も学年1位をキープしている努力家。生真面目で人から頼られると断れない性格をしている。

江南梨沙

教師が手を焼くほど素行に問題を抱える不良少女。人も寄せ付けずほとんど孤立している。

花咲詩織

直哉と共にクラス委員を務める。学業も優秀で学年1位の直哉のことを強く意識している。

西川楓

高いコミュ力を持ち、幅広い交友関係を築くギャル。唯一、江南に対して気後れすることなく、対等に付き合うことができている。

大楠紗香

直哉の妹で乙女ゲームに入れ込むオタク。兄とは対照的にずぼらな性格をしている。


他人を寄せつけない無愛想な女子に説教したら、めちゃくちゃ懐かれた/感想・レビュー

第5回カクヨムWeb小説コンテストラブコメ部門特別賞を受賞した作品になります。もともとはカクヨムで投稿、連載されているもので、それを書籍化したものです。
そのため、一冊として綺麗に物語がまとまって完結している形でありません。導入に近く、それゆえに、これだけで面白い物語と評価するのは難しくはありますが、面白そうな物語であるという印象は、しっかり与えてくれました。
本作の一番のウリは、魅力的なキャラクターにあると感じました。ライトノベルはキャラクター小説ですから、言うまでもなくキャラ立ちが肝です。とりわけ恋愛ものだと、行きつく展開やパターンが限られていることもあり、読者が作品に求める大部分はキャラクターというものが占めていきます。タイトルで大筋の流れが伝わるともなれば、なおさらです。
その点で言うと、主人公の大楠直哉とヒロインの江南梨沙は、この二人が生むドラマを見たいと感じさせるとても良いキャラをしていました。
いわゆる優等生と不良の組み合わせという設定ですが、ただの定型ではなく、そのバックグラウンドをしっかりと練り上げ、個性を作り上げています。
特にキャラの弱みの部分が繊細に描かれているのが秀逸でした。豊かで深みのある人間性が緻密に表現されています。「弱さ」という人間的な未熟さや不完全さは青春ものにおいて欠かせないファクターでもありますので、そこの描写に力が入っていると繰り広げられる人間ドラマへの期待感がやはり増します。
この作品には、タイトルにもあり、物語で一つの重要ポイントになっている「説教」という独特の行為があります。これを物語のはじめの方に自然に扱って成立させることができたのも、キャラクターに安定性があった紛れもない証左でしょう。
本来説教という行動をキャラにとらせるのは難しく、例え正論であっても、それを口にする人物によっては、読者にとって好意的に受け入れがたくなってしまうものです。
ましてや、直哉は、真面目な優等生でいろいろこなせる完璧型でした。それが故に説教が鼻について共感性を失ってしまうリスクもありました。しかし、冒頭に人物を形成した過去に触れたり、説教時も正当性の部分をむやみに主張しなかったり、弱い部分を晒してみたり、巧みな工夫で緩和しながら乗り越えています。
はやい段階で見どころが欲しいと説教シーンを可能な限り前に寄せながらも、必要な部分を丁寧に積み重ねた無駄の少ない良い序盤に感じられました。
もちろん説教という性質上、万人受けせず、読者の価値観次第で好き嫌いが分かれるところでもあります。しかし、だからこそ、ここを自然と受け入れられる読者は、きっとそこから紡がれる物語が気になり、深くのめり込んでいくであろうと思います。
一つ注意点をあげると、ラブコメ部門での受賞ではありますが、恋愛的な甘い要素やコメディ的なお笑い要素は、それほど強いわけではありません。典型的なラブコメスタイルよりも、恋愛青春ものの方に系統が比較的近いかもしれません。
ジャンルの好みがマッチするのであれば、良質なクオリティで十分な期待感も抱けますので、是非読んでみてほしいおすすめの作品です。 

ひとくちおすすめポイントまとめ

  • 説教からはじまるラブコメという独創的で興味深い恋愛!
  • 弱さを抱えながらもがくキャラクターの楽しい人間ドラマ!

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