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おすすめラノベ紹介/チヨダク王国ジャッジメント 姉と俺とで異世界最高裁判所

チヨダク王国ジャッジメント 姉と俺とで異世界最高裁判所

チヨダク王国ジャッジメント 姉と俺とで異世界最高裁判所【電子特典付き】 (MF文庫J)

レーベル;MF文庫J
著者;紅玉 ふくろう
イラスト;jonsun
発売日;2021/3/25
関連ワード;異世界 裁判 ファンタジー 法律 姉

チヨダク王国ジャッジメント 姉と俺とで異世界最高裁判所/カンタンなあらすじ

ゲーム好きの少年・佐藤アクトが、義理の姉であり裁判官の我妻ツカサと居酒屋で飲んでいると、二人して突然異世界へと召喚されてしまう。
そこは、アクトが普段ゲームで目にして、想像したようなファンタジーな風景とはどこかズレていた。
人間とは異なる種類の生物が歩き、生活しつつも、建物や道路といった構造物がアクトやツカサにとって馴染み深い日本のものが扱われた妙な既視感のある世界。
その地は、大規模なコピペ魔法によって、日本の千代田区をほとんど模倣してできた「チヨダク王国」という国家だった。
現代日本の優れた文明やシステムをどんどん取り入れることで急速に発展、繁栄したチヨダク王国だったが、その裏側ではそれぞれの成立に正当な歴史の積み重なりが無視されたことによる歪みと混乱が起きていた。
混乱を収め、秩序を保つために、日本の法律をそのまま施行する形をとっていたが、それもまた王国民全体の理解が乏しく、正常に機能していない問題を抱えていた。
アクトとツカサは、自分たちを召喚したチヨダク王国の代表である伊藤エクスタシアに、日本の正しい裁判的統制を国にもたらすようお願いされるのだった。


チヨダク王国ジャッジメント 姉と俺とで異世界最高裁判所/登場人物紹介

佐藤アクト

高校二年生の純日本人。ゲーム好きで、ファンタジー異世界についても詳しい。姉と共に異世界である「チヨダク王国」に召喚され、そこで裁判所補佐官の役目に就く。

我妻ツカサ

アクトの義理の姉で重度のブラコン。司法試験をトップで突破し、史上最年少で裁判官になった稀代の才女。アラサーでありながら、転移の特典で15歳の体になっている。

伊藤エクスタシア

チヨダク王国の実質的な国のトップだが、まだ若いため自ら王女と名乗る。底抜けなほどゆるく天真爛漫な性格で、さらに国を豊かにしていったことから国民からの人気は高い。

加藤シロ

幼少の頃より王家に仕える犬耳のメイド長。エクスタシアの命令により、アクトの世話係となる。感情を抑えることを義務付けられていたため、無表情。

斎藤イレアナ

王宮府の重臣であるハーフエルフ。王国の司法試験に合格した検察官。ライトノベルをきっかけにして日本文化にのめり込む。

勇者ラマン

齢70になる年老いた勇者。魔王を討伐した英雄だったが、現在はうらぶれて酔っぱらいの浮浪者のような見た目をしている。「神炎」のスキルの使い手で、パーティを焼殺した事件の被告人。

チヨダク王国ジャッジメント 姉と俺とで異世界最高裁判所/感想・レビュー

第16回MF文庫Jライトノベル新人賞最優秀賞に選ばれた作品になります。総数1913本の中の頂点ということもあり、大変魅力的な輝きが詰まった作品でした。特に発想と設定の面がユニークで、それらを支える著者の知識量もまた素晴らしいものがありました。
本作は分類としては異世界ファンタジーものに属します。現代人の主人公が召喚されることも含めて、WEB小説やライトノベルにおいてはいまや巷に氾濫し、珍しさもない設定の物語です。もちろんそこは、多くの作品に埋もれず、他と並んでも見劣りしないような工夫がありました。
その一つは、ありがちな冒険やバトルに頼ったものでないことです。この作品のメインテーマとなったのは、「裁判」になります。ライトノベルとしては非常に珍しく、農業であったり、商業といったものよりもとっつきにくくなかなか扱われない題材かもしれません。
法律というとお堅く小難しいイメージがあるため、読者の食いつきが悪いことも想定されます。しかし、あえてそうした部分に踏み込んだ意欲と挑戦心は、素晴らしいです。構成された物語の厚みもしっかりと法律の仕事に携わった著者の知識と経験で裏打ちされています。
もう一つの工夫は、舞台をファンタジー異世界にしつつも、ありがちな西洋系をメインにせず、日本の一地域である千代田区を混ぜてしまうという発想です。和風とも一線を画す描き方は、とても新鮮で惹きつけられます。
法律と異世界という一見、親和性のないものを混ぜ合わせつつ、エンタメの形にしたのも見事でした。異世界が日本を模しつつも、それがゆえに問題が生じ、日本の法律を必要とするという「日本の裁判」を効果的に使うための設計は他では見られず、とても面白いです。勇者が被告人というのも、ワードだけでも愉快さとワクワク感が突き抜けてます。
唯一、欠点と言えそうな部分は、読み手にとって少しコストが重そうだという点でしょうか。
まず法律という専門要素がかなり大きいものを占め、それに加えて、ファンタジーならではの設定部分の説明でコストが増してしまいました。読み手の理解への負担の肥大化は、やはり無視できません。
著者も意識してか、展開の運び含めてかなり軽めにしようとされてはいます。個人的な感覚としては、より強く、もっと異世界部分の一部設定などを典型的なものにしたり、簡素にしたほうが、理解が進み、読みやすくウケの幅が広くなりそうです。娯楽に溢れた現代で我々読者の贅沢化は留まることを知らず、面白さのみならず、手軽さと親切さも同じくらいには求めてしまいます。
作品のキャラクターについては、メインのアクト、ツカサ共にお話を動かす存在として、良い味を出していました。
裁判を主軸にして裁判官役が姉のツカサだと弟のアクトの存在感や役割が弱くなるのかなと最初思いました。そこは、ジャッジとは違う部分をアクトが全般的に司ることでしっかり立ち位置を強く主張することができていました。
ツカサもヒロインキャラとして魅力が高めで、特にオン・オフのギャップが強めのところが好印象です。公私の使い分け自体は、優秀な姉キャラとしては典型的な要素と言えるかもしれません。しかし、裁判官という役割がつくことで熱さ、カッコよさ、厳粛さを感じさせるシーンが表現されたのは、この作品ならではの特別心惹かれるポイントです。
恋愛要素はそれほど強くありませんでしたが、今後が描かれるとしたら、そうした面も期待しつつ、楽しみに待とうと思います。

ひとくちおすすめポイントまとめ

  • 法律と裁判を扱った異色の異世界ファンタジー
  • 裁判官として、魅力的な色を主張するヒロインキャラ!

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