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おすすめラノベ紹介/スパイ教室02 《愛娘》のグレーテ

スパイ教室02 《愛娘》のグレーテ

スパイ教室02 《愛娘》のグレーテ (富士見ファンタジア文庫)

レーベル;富士見ファンタジア文庫
著者;竹町
イラスト;トマリ
発売日;2020/4/17
関連ワード;スパイ 学生 戦闘 ファンタジー 頭脳

01の紹介はこちら

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スパイ教室02 《愛娘》のグレーテ/カンタンなあらすじ

生物兵器の奪還任務を無事達成した臨時チームの「灯」は壊滅したチーム「焔」の後を継ぐ形で正式なチームへと昇格した。
ここからスパイとしての第一歩を踏み出していくものだと思っていた少女たちだったが、「灯」はチームとしてある大きな問題を抱えていた。
最強のボスによる超ワンマン体制――上から回ってくる全ての任務は、クラウスの手によってたった一人で解決してしまっていた。少女たちは、その未熟さゆえに、任務にまとも参加させてもらえず、「クラウスを倒す」という訓練を継続する日々が続いていた。
しかしある日、クラウス独力では、解決できない重大な不可能任務が発生する。
内容は、暗殺者殺し。協力者を含めて対処するため、クラウス一人では手が足りず、されど、少女たちの実力的には、任務に連れ出すにはまだ不安が残っていた。
そこでクラウスは、チームの中で、優秀なメンバーを選りすぐって、この任務にあたることを決断する。しかし、選出されたのは意外なメンバーだった。

スパイ教室02 《愛娘》のグレーテ/登場人物紹介

ウーヴェ・アッペル

アッペル家の当主で上院議員。上流階級出身ながら、かなりの倹約家で質素な暮らしを好む。厚生衛生省の副大臣を務め、社会福祉の課題解決に力を入れている。

オリヴィア

ウーヴェの屋敷に務めるメイド長。ウーヴェも信頼を寄せる優秀な仕事ぶりをみせる。恋愛の話には目がない。

ローランド

「屍」と呼ばれる帝国所属の殺し屋。卓越した殺しの技術を持ち、多くの要人を消してきた。クラウスの実力を警戒し、最大の障害とライバル視している。


スパイ教室02 《愛娘》のグレーテ/感想・レビュー

スパイ教室の第2巻目で、スパイ少女たちの物語の続きになります。1巻は非常に面白さが詰まっており、特に最強のスパイと落ちこぼれの教え子のチームという特殊かつ斬新なアイデアを武器に鮮烈な印象を与えてくれました。それだけに続編への期待のハードルが高くなった作品です。しかし、強烈な衝撃のみの一発芸に終わることなく、2巻目においても高いクオリティで仕上がっていました。
本作の売りの一つは、「嘘」です。フィクションの世界の中で重ねられた大胆な嘘を利用して、スパイらしさを存分に感じさせてくれます。
今回も、前回同様に良い意味で読み手を裏切るという工夫と仕掛けがありました。こちらの想像を超える動きが多く、驚きと意外性の連続で、終始飽きることなく読ませる魅力に溢れていました。著者の「虚構」のつくりに惚れた方であれば、きっとまた満足できることと思います。
もちろん意表を突く展開に頼るだけでありません。スパイという題材からスリリングで緊張感ある部分を描きつつも、コミカルなタッチも交える優れた緩急の付け方は、実に安定しており、作品が高い水準でまとまっていました。
2巻のサブタイトルは、《愛娘》のグレーテ。そのままの通り、今回はスパイ少女の一人グレーテがメインのお話です。1巻では、多数のキャラクターを動かしていくという、大変挑戦的であった手法をとっていましたが、その分描けることにかなり制限がかかっていました。その描けなかった部分であるキャラのより深いところともう一つ「色恋」という要素を加え、ラノベ的に欲しかったところを埋めた構成になっています。
バリエーション豊かであったキャラクターらを一部切り取って、個性やバックグラウンドへとフォーカスしていく動きや意図は、とても明確でスムーズなものでした。文章やストーリーの中で削減するべき情報や与えるべき情報の整理や取捨選択が無駄なく行われています。著者にとっての見せたいところ、魅せたいところへの意識と理解がはっきりしていたからこそ、わかりやすく受け取りやすい形がつくられたのでしょう。運び方のクレバーさや情報コントロールの巧みな手際もまた工作員らしさを感じられるポイントかもしれません。
動かすキャラクター数が必然的に絞られただけに、そのやりとり、掛け合いも伸び伸びとし、軽妙なユーモラスが色濃く冴えておりました。
「色恋」という部分についても、扱いによってはどう転ぶか危ういなと感じましたが、見事に描いております。安易さを出さず、過剰にやりすぎず、それでも少女らしい一面を出して、キャラクターに好感をもてる良い形でした。クラウスの捌き方や距離感も悪くなく、とてもいいバランスであったと思います。嘘があるからこそ、本当の部分を晒すことの価値や威力が高まっているのも素敵で良いです。
今後、他の少女らも恋愛に絡んでくるのかはわかりませんが、いずれの展開にせよ、良質なエピソードになるだろうと期待できます。
次巻は今回描かれなかったメンバーらのお話になります。今回の終わり方について、不穏でありながら、しかしワクワク感を掻き立てられる引きになってましたので、楽しみです。極上な作品でした。

ひとくちおすすめポイントまとめ

  • スパイが持つ独特の魅力と虚構を溶かし込んだストーリー!
  • 豊富なキャラクターを絞って、恋愛描写も描いてパワーアップ!

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