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ライトノベルを中心とした小説や物語のレビューブログ

おすすめラノベ紹介/楽園ノイズ

楽園ノイズ

楽園ノイズ (電撃文庫)

レーベル;電撃文庫
著者; 杉井 光
イラスト;春夏冬 ゆう
発売日2020/5/9
関連ワード;学園 音楽 青春 女装

楽園ノイズ/カンタンなあらすじ

ネットミュージシャンとして活動している村瀬真琴はある日、姉からの勧めもあり、女装して演奏した動画を投稿する。
思いがけず大きな反響を起こすが、それが高校の音楽教師・華園美沙緒に見つかって、正体が知られてしまう。
真琴は、自身の秘密を黙ってもらうことの交換条件として、美沙緒から雑用を次々と押し付けられる。
伴奏に編曲、楽器倉庫の整理や、知り合いへの届け物など様々な仕事をきっかけにして真琴は音楽少女たちと出会っていく。
少女たちは類まれなる音の才能を有していたが、その眩い輝きは表舞台より儚く消えようとしていた。
彼女らの奏でる音に魅入られた真琴は、自らの曲とセッションを重ねて、あるべき舞台へと導いていく。

楽園ノイズ/登場人物紹介

村瀬真琴

「Musa男」の名で活動するネットミュージシャン。中性的な容姿をしており、女装が様になってしまう。

冴島凛子

かつてピアノのコンクールを荒らした元神童。辛辣な物言いが多く、特に真琴に対しては遠慮がない。

百合坂詩月

華道家元のお嬢様。ジャズ好きで道楽人の祖父によってドラムスを仕込まれる。

宮藤朱音

不登校児で、スタジオに入り浸ってはバンドの助っ人をしてきた。様々な楽器を使いこなし、さらに周囲のレベルに適応する技術を持っている。

華園美沙緒

新任4年目の音楽教師。美人で生徒からの人気が高い。あまり仕事をする姿を見せず、真琴や凛子などに役割を押し付けることがほとんど。

楽園ノイズ/感想・レビュー

ストーリー

音楽と青春をかけあわせた物語になっています。おおまかなストーリーは、学生たちが集まり自然とバンドを結成していくというものです。
三人のヒロインとそれぞれ出逢う典型的なボーイミーツガールのライトノベルの構成で各キャラクターのストーリーも章ごとにシンプルにまとまっていました。
あらすじや試し読みでは女装するという設定で、女装男子の物語の方向性も予測されましたが、そちらの話はメインではありません。もっともそこは大事な部分でもないので、個人的にはあまり気になりませんでした。
作品テーマとコンセプトの芯の部分がブレずにはっきりしており、気持ちよく読むことができました。
音楽がメインだと、アニメやドラマ、ゲームと違って小説では文字だけで演奏を伝えなければならないのですが、さすがにベテラン作家らしい高い表現力で、バンドの熱や空気が文章を通してよく伝わってきました。没入感と高揚感は大変高かったです。バンド経験がある著者だからこその経験と知識がリアルで説得力ある描写に繋がっていました。
読み手が音楽についてわからなくても支障なく面白さが伝わりますし、造詣があるならなおのこと楽しめます。一部少しマニアックで、濃いめの読み味ですが、好きな方には読み応え十分だと思います。
青春部分においても「らしさ」が出ていました。熱さと弱さと爽やかさ、そして温かな感動が濃密に詰まっており、清々しい読後感を得られます。
キャラクター間のやりとりもパターンは決まっているもののテンポも小気味よく、コミカルなシーンも抜かりありません。
全体的にバランス良く非常にハイレベルな作品で楽しく読むことができました。
杉井光氏の作品を読んだことがあり、雰囲気が好きであれば間違いなく虜となりますので、ぜひ手に取って読んでみることをおすすめします。

キャラクター

青春系のキャラクタードラマにおいて必要とも言える丁寧なキャラ描写がひとりひとり過不足なくされていました。
語り手であり、中心となる主人公の真琴もラノベ的なキャラ造形も見事で、好印象でした。
青春を描く上で、感情移入しやすいように心理面も色濃くしっかりつくられていています。臆病なところや憧れ混じりの劣等感などの内面描写も正面から向き合って書いており共感しやすかったです。
鈍感で中性的でなよっとしたありがちな弱みはありましたが、それでも確固たるところも持っており、要所で放つ熱と光は主人公として物語を強く輝かせていました。
華を添える4人のヒロインらも非常に魅力ある布陣でした。バリエーション豊かな可愛さで個性に差別化が図られていました。主人公への辛辣な言い回しも多々見られましたが、不快感は薄く、あまりストレスを感じさせません。悪口一辺倒に寄せず、好意的な台詞も混ぜ込んで、良い塩梅で中和させていました。
全体的に登場人物は少なくありませんでしたが、特に混乱もなく、限られたスポットライトが当たる出番には存在感を主張して、読み手の印象に最後まで残りました。
惜しむらくは、バンドを組むまでがほとんどを占め、バンドを組んでの活動が最後の最後になってしまったので、グループでのやりとりがどうしても限定されたことです。存分に味わうには、若干の物足りなさがありました。個人的に彩りに溢れたキャラ同士の複雑な交わり、いろいろな会話パターンをもっともっと見たい気持ちが湧きました。
そう思えるぐらい読み手も愛着をもてる素敵なキャラクターであると感じました。

ひとくちおすすめポイントまとめ

  • 音楽への強い愛と熱のこもった青春ストーリー!
  • ベテラン作家らしい安定感ある表現力とバンド経験を存分に組み合わせた深みのある演奏描写!

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