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おすすめラノベ紹介/時をかけてきた娘、増えました。

時をかけてきた娘、増えました。

時をかけてきた娘、増えました。 (ガガガ文庫)


レーベル;ガガガ文庫
著者;今慈ムジナ
イラスト;木なこ
発売日2021/4/20
関連ワード;恋愛 学生 娘 タイムワープ

時をかけてきた娘、増えました。/カンタンなあらすじ

清水大地は同じクラスの安達藍に想いを寄せていたが、ろくに話かけられもせず一歩も踏み出せない日々を送っていた。
演劇の才能があって、容姿にも恵まれた藍に対して、大地には何の取り柄もない。
釣り合わないことは痛いほど理解していて、傷つくのも怖くて、だから胸に想いを秘めたまま過ごそうと決意していた。
しかし、ある日突然、部屋に黒い穴が発生すると、そこから目の前にどこか想い人の面影を残すセーラー服姿の美少女・七彩が現れた。
彼女は大地の娘を名乗り、未来からタイムワープしてきたことを告げる。
将来、藍と結婚することと同時、自分の劣等感が原因で家族に大きな迷惑をかけることを知った大地は、七彩の協力のもと勇気を振り絞って一歩を踏み出していく。

時をかけてきた娘、増えました。/登場人物紹介

清水大

住友高校二年生。おとなしく中性的な容姿をしている。特別な何かになりたいと思いつつも、失敗を重ねたため自分に自信が持てていない。

安達七彩

未来の大女優、安達藍の娘。親にはあまり似ずしっかり者の一面を持つ。失敗ばかりでコンプレックスを持ってしまうダメダメな父である大地をなんとかするため未来からやってきた。

安達藍

演劇部の副部長。類まれなる演技の才能があるが、それ以外のことになるとやや抜けがちなところがある。クールで無表情なため近寄りがたいイメージを持たれている。

清水花蓮

未来からやってきた小日向宇美との娘。父や母と似ず気が強く活発な性格をしている。自他ともに認めるファザコン

小日向 宇美

大地のクラスメイト。引っ込み思案でクラスでも目立たず孤立した存在だが、声に特徴があり、華やかである。「ミウちゃんΩ」というVtuberとして活動をしている。

持田恵

演劇部所属で安達藍の友人。周囲に避けられがちな藍にもしっかりと付き合い支える良き理解者。

時をかけてきた娘、増えました。/感想・レビュー

ストーリー

未来からヒロインとの娘が主人公のもとにやってくるという設定の物語です。目新しさ自体はありませんが、古くから愛用されており、広く好かれるだろう設定になります。大きなひねりも入れていないスタンダードタイプに近いのでこういうのが読みたかったという人にはかなりぴったりの内容かと思います。
タイムワープを使ってますが、設定や説明など余計に凝っていることもありません。複雑さも極力排除されており、わかりやすくシンプルにラブコメのみに注力して楽しむことができます。現代受けしやすいようにストレス軽減して、読みやすく配慮された形です。
ラブとコメの配分比率も優れていました。二つの親娘を軸に交互にヒロインを攻略しながら、恋愛を進めるところ、コミカルなシーンで緩ませるところ、シリアスで締めるところなどバランスよく緩急がついていました。ラブコメものに当たり前に期待されるものだからこそ、過不足なく提供されており好印象でした。
ありきたりな設定だけに、そこに展開される物語への水準は厳しいはずですが、飽きることなく楽しく読み進められました。

キャラクター

「娘が増えました」という設定上、複数の娘が登場するため、ヒロインと合わせると最初からキャラクターはやや多めです。それでもキャラの描き分けは上手く、それぞれの個性もはっきりとしており、読み手が混乱することはほとんどありません。
主人公に関しては、「中性的」「優柔不断」「クラスでは目立たないポジション」「自分に自信がなくネガティブ」とお手本のような典型的ラブコメ主人公でした。ここは好き嫌い別れるポイントかもしれません。しかし、消極的だったり、優柔不断だからこそ、それを活かすことで動く物語でもありました。大地が他の娘に気を持ってしまうがゆえに、娘が増える可能性がでてくるので、面白い要素の一つと言えます。
また、なかなかアクションを取ろうとしないからこそ、必然的に側に立つ娘がいろいろ強引に画策していくのも、物語の主軸である娘キャラ個々の味が感じやすく、見せたい部分の主張がはっきりしていました。
娘を幼い年齢にせず、あえて同年代の設定にしたのも面白いところです。これによって親娘で同年代の友達のような関係性が築かれているのも、この作品の特徴です。親娘が並んでも、キャラが沈まないように対照的な性格に描かれていますので、相互に魅力が引き立っていました。
気になる点として、この手の設定の宿命か、どうしても娘とセットであることや、娘の方が主人公と近く、多くのやり取りをこなすため、メインヒロイン単体としての関心が分散したり、印象が薄くなりがちになるところでしょうか。親娘という一粒で二度おいしい反面、そこはデメリットかもしれません。
存在感が弱くなりすぎないように、キャラ立ちの部分はしっかりしていました。天才キャラという表現の難しいキャラクターでしたが、その特殊さが、台詞や行動からしっかり滲み出て伝わってきました。恋愛部分でのギャップもあり、可愛さ、破壊力も十分高かったです。
娘の一人のファザコン設定もありがちといえばありがちでしたが、表出のさせ方が巧みでした。終始むやみやたらと異常な好意を押し出すタイプでないので、安っぽさが全くありません。ヒロインである親の魅力を食いすぎず、かつ存在感も十分発揮する絶妙な塩梅でした。
タイトルどおり今後も娘が増えるとなると、必然的に親娘の2人が新キャラとして登場するわけですが、どのように描き分けや個性の出し方をしていくのかもこれから注目していきたいポイントになりそうです。

ひとくちおすすめポイントまとめ

  • 対照的な親娘の可愛らしいキャラクター!
  • 定番でありがちな設定ながら、現代向けに洗練させたラブコメディ!

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